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2020年先発転向の楽天・松井裕樹 奪三振王争いに期待

2020 1/8 06:00浜田哲男
楽天の松井裕樹投手ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

2020年は先発へ転向

2019年は68試合に登板し、自己最多38セーブ、防御率1.94の好成績をおさめた楽天の松井裕樹。自身初となるセーブ王に輝くなどクローザーとして獅子奮迅の活躍を見せた。

これでプロ入り後、30セーブ以上をマークしたのは4回目で通算139セーブ。今やチームのみならず、日本球界を代表するクローザーの一人と言っても過言ではない。そんな松井が、2020年シーズンは先発へ転向する。元々先発へのこだわりを持っていたが、絶対的守護神の先発転向は本人にとってもチームにとっても大きな決断だ。

小さく曲がる高速スライダーが柱

2019年はシーズンを通してクローザーを務めた松井だが、2018年には先発としても登板していた。2018年10月4日の日本ハム戦では、6回を投げて14もの三振を奪う快投を披露。球団タイ記録となる7者連続三振もマークしている。

奪三振に効果的だったのは、曲がりの小さい速いスライダー。右打者の膝元に食い込んでいくキレ味鋭いスライダーにバットが面白いようにまわり、左打者も外角に逃げていく高速スライダーに思わずバットを出してしまう。また、150km前後の伸びのある直球に対しては、外角高めに外れようとも打者はつい手を出し、バットが空を切る。試合には3-4で敗れたものの、先発としても十分にできることを強く印象づけた投球内容だった。

2019年のゾーン別データをみると、対右打者の外角高めの被打率は.120で奪った三振は15個と多い。対左打者の外角高めの被打率は.133。右打者・左打者ともに外角高めの直球で打ち取る(または空振りをとる)シーンがよく見られた。また、対右打者の内角低めの被打率は圧巻の.095で奪三振も15個。前述した高速スライダーがいかに機能しているかの証拠だ。

2018年までは投球の中心は直球とチェンジアップで、スライダーは全投球数のうち約8%と少なかったが(被打率.294)、2019年はスライダーの比率が約30%に増加(被打率.133)。107個奪った三振のうち40個がスライダーによるものだ。2018年までの武器だったチェンジアップに曲がりの小さい高速スライダーを加えた松井が、先発でどれだけの数の三振を奪うかにも注目だ。

奪三振王争いにも期待

松井の凄さは13.82という驚異的な奪三振率でも分かるが、特筆すべきは先発投手に混ざって奪三振数ランキングの上位に顔を出していることだ。投球回69回2/3で107個もの三振を奪っている松井は、112個を記録し2019年まで同僚だった美馬学(現ロッテ)に次ぐ、リーグ8位。松井以外は全て先発投手がランクインしており、松井の奪三振力の高さを改めて思い知らされる。

2019年パ・リーグ奪三振数順位ⒸSPAIA


先発とリリーフでは勝手が違い、リリーフであまり投げていなかったカーブやフォーク、また曲がりの大きなスライダーなどを織り交ぜていくことも考えられるため一概には言えないが、先発転向初年度での奪三振王の期待も抱かせてくれる。奪三振王の常連、同僚の則本昴大や、2019年の最多奪三振・ソフトバンクの千賀滉大らとタイトル争いを繰り広げる可能性も大いにあるのではないだろうか。

プロ入り1年目の2014年には主に先発投手として27試合に登板。4勝(8敗)ながらも、投球回(116回)を上回る126個の三振を奪い、高卒ルーキーながら逸材の片鱗を見せていた松井。先発に再挑戦する2020年、どこまで白星と三振を積み重ねていけるか注目だ。

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