千葉移転後の球団記録を更新。本塁打を激増させたロッテ打線
シーズン順位こそ4位に終わったものの、打撃面においては劇的な進化を見せ、来季へ大きな期待を残したロッテ。
今季はリーグ3位となる158本のチーム本塁打を記録。リーグワーストの78本に終わった昨季から倍増となり、日本一を達成した2010年以来の100本超えを達成した。本拠地を千葉に移転した1992年以降に限っては、2003年の145本を抜いて球団記録を更新。長年の課題であった「長打力不足」は、この1年で克服されたと言っていいだろう。
ロッテ打線の躍進は、シーズン開幕前から予想されていたことではあった。強風がフライを押し戻すZOZOマリンスタジアムは本塁打が出にくく、これまで「投手有利」傾向の強い球場のひとつであったが、今季から「ホームランラグーン」が設置され、外野フェンスが最大で4メートル前に移動。フェンスの高さも4.4メートルから3.3メートルまで低くなった。パ・リーグの他球場と比較しても、本塁打が出やすいサイズに変わり、球場改修が貧打解消の一手となるか注目されていたのだ。
結果として本塁打は前述のように激増。ホームランラグーンへ飛び込む「ラグーン弾」という言葉も流行し、「ラグーン効果は絶大だった」という感想を持ったファンは多いはずだ。
「ホームランラグーン」は無関係?ビジターでも本塁打が倍増
今季のロッテのZOZOマリンスタジアムでの本塁打数は70試合で72本(1試合あたり1.03本)だった。対して他球場では73試合で86本(1試合当たり1.18本)と、ビジターでより多くの本塁打が生まれている。昨季からのアップ率もZOZOマリンスタジアムでは200%(昨季36本)であるのに対し、他球場ではそれを上回る205%(昨季42本)となった。
ホームランラグーンの恩恵で本塁打を量産したということであれば、ZOZOマリンスタジアムでの本塁打だけが増えているはず。実際は他球場での本塁打の方が増えており、今季の劇的な打力向上はホームランラグーンの恩恵というよりも、打撃そのものに変化があったことがわかる。
また、ホームランラグーン席に飛び込む「ラグーン弾」はチーム全体で15本。チーム本塁打数の10%未満と、決してその割合は高いわけではなかった。
ロッテ打線に「フライボール革命」は起きたのか?
では、何からロッテに起こった打撃の変化を読み取ることができるだろうか。
本塁打急増の背景として、昨今の打撃トレンドからすると、気になるのは大リーグで話題になって久しい「フライボール革命」だ。打撃の基本であるライナーではなく、フライを狙って打つことで本塁打を激増させた打撃理論である。
この理論は徐々に日本でも選手個人レベルで広がりつつある。特に、狭くフェンスの低い球場では、意図的にフライを打ちにいくのは合理的な策のように思える。ロッテの場合、今までフェンスが遠く高かった打席からの景色が変わることで、たとえ無意識だとしても、打球に角度をつけてフェンスオーバーを狙っていきたくなる選手の心理は想像できるところだ。
その意識がロッテ打線に好影響をもたらし、敵地でも本塁打が量産されたという仮説はどうだろうか。
データから「フライボール革命」の形跡を探る
今季の打席結果からフェアゾーンに飛んだ打球をゴロ(GB)・フライ(FB)・ライナー(LD)に分類し、その割合を見ていきたい。「GB/FB比率」はゴロとフライの比率で、ゼロに近づくほどフライの割合が高いことを示している。
ロッテの昨季から今季への打球データの推移について、まずZOZOマリンスタジアムでの数字を見ると、ゴロ率が2.62%下がり、フライ率は2.75%上昇。GB/FBは0.121ポイント低くなっている。
他球場を含めた全打席結果のGB/FBは、より低い0.936。本拠地と敵地で打撃スタイルを変えた形跡はなく、共通してフライが増え、ゴロが減る形となった。
パ・リーグ他チームのデータとも比較しておきたい。
全打席の結果として、ロッテのほかフライ率が上がったのは0.08%微増の西武を除くと楽天(プラス1.62%)のみ。ゴロ率が下がったのも楽天(マイナス1.98%)のみである。リーグ全体でフライが増えたわけではなく、ロッテのフライ率の上昇が際立つ結果が出た。
この1シーズンで最もフライを増やしてゴロを減らしたのがロッテであった。その結果、GB/FBの低さはリーグ3番目からリーグ1番目に動き、今季はパ・リーグでフライ率がゴロ率を上回る唯一のチームとなっている。
ここまでチームとしてのデータを見てきたが、後編では打者個人のデータを分析したい。