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数字でみる2019年の楽天 補強があたり得点大幅増、救援防御率もリーグトップ

2019 12/30 06:00勝田聡
楽天・浅村栄斗ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

総得点は94点増も本塁打数は意外に伸びず

2019年シーズンの楽天は最下位からの巻き返しを図るべく、大きな補強を行って臨んだ。浅村栄斗とブラッシュが新たに加わり、打線は大きく強化され、得点数は前年の520点から614点へと94点も増加している。チーム打率も同様にリーグワーストの.241からリーグ2位の.251と上昇。ふたりの補強は成功したと言っていいだろう。

2019年シーズン楽天各種成績


一方で本塁打数は伸びなかった。浅村とブラッシュがともに33本塁打を記録したが、チームの総本塁打数は9本しか増えず141本でリーグ4位に終わっている。ジャフェット・アマダー(20本)、カルロス・ペゲーロ(17本)のふたりが退団したことと、2018年シーズン18本塁打を放った田中和基が故障もあり1本塁打に終わったのが要因だ。とはいえ、ふたりの外国人選手の退団分をブラッシュひとりでほぼ補えたのは大きい。

投手成績に目を向けると、失点数は2018年シーズンの583に対し、2019年シーズンは578とほぼ変わらなかった。チーム防御率もリーグ内順位は3位から2位になったものの、3.78から3.74とほぼ横ばいと大きな変化は見られなかった。打線の強化が最下位から3位へ浮上した大きな要因と言えそうだ。

盗塁成功率は5割台、三木新監督による意識改革なるか

打撃面の数字では、出塁率(.307→.333)がリーグワーストから2位へと浮上しており、得点力アップに繋がったことは容易に想像がつく。同様に長打率(.368→.390)も大きく向上した。

一方で盗塁数が69から48へと減少している。盗塁数自体が多い、少ないというのはチーム方針もあるため、なかなか判断がしにくいが、気になるのは盗塁成功率である。2018年シーズンもリーグワーストの.639だったが、今年も改善することなく逆に.558にまで下げてしまった。

石井一久GMは平石洋介監督が辞任した後に「先の塁への意識改革が1年を通して改善しきれなかった」と述べている。盗塁成功率に言及しているわけではないが、そういった細かいことも含めての所感だろう。2020年シーズンから指揮を執る三木肇新監督は、ヤクルト時代に山田哲人に走塁を教えたことでも知られている。意識改革ができるだろうか。

救援防御率はリーグトップも松井が先発転向へ

開幕から則本昂大と岸孝之とふたりのエース格が離脱したこともあり、先発陣は苦戦を強いられた。中継ぎから転向した石橋良太こそ予想以上の活躍を見せたものの、ほかに台頭した投手はいなかった。その影響もあり先発の防御率(3.87→4.17)は悪化し、リーグ2位から5位へと落ち込んでいる。

一方で中継ぎ陣は踏ん張った。中継ぎの防御率(3.59→3.07)は大きく向上し、リーグでもトップとなった。なかでも松井裕樹の復調は大きい。2018年シーズンは不振もあり、守護神から外れることもあったが、2019年はシーズンを全うし、チーム史上初となる最多セーブのタイトルを獲得している。だが、2020年シーズンは先発への転向がすでに報じられており、絶対的守護神が不在となる。三木新監督は、改めて勝ちパターンを形成しなければならない。

また先発ローテーションは大きく変わる。美馬学が国内FA権を行使してロッテへと移籍。チーム唯一の規定投球回到達投手の退団は痛い。しかし、金銭トレードで涌井秀章を獲得し、前述の通り松井が先発へと転向。則本、岸を含めて4人までがほぼ埋まった形だ。そこに石橋や辛島がつづいていく。苦しんだ先発投手陣は改善され、リーグトップだった中継ぎ陣は松井が抜ける。はたしてこの変化がチームにどのような影響をもたらすのだろうか。