打撃タイトルをほぼ独占
2019年シーズン、混戦のパ・リーグを制したのは西武だった。浅村栄斗(現・楽天)、炭谷銀仁朗(現・巨人)、菊池雄星(現・マリナーズ)が退団したが、その劣勢を跳ね除けて2連覇を成し遂げている。

パ・リーグ2連覇を達成した西武の持ち味はなんと言っても「山賊打線」と称されるその打線にある。打撃の数字を見ると756得点、チーム打率.265はともにリーグトップ。174本塁打もリーグ2位となっている。打撃タイトルも首位打者・森友哉、本塁打王・山川穂高、打点王・中村剛也、最多安打・秋山翔吾、盗塁王・金子侑司と西武勢がほぼ独占した。
この5人に加え源田壮亮、外崎修汰、栗山巧の3人も規定打席に到達。実に8人が規定打席に到達したのである。つまり、主力メンバーが、ほぼ故障なくシーズンを通して一軍にいたということだ。これは優勝を逃したソフトバンクとは対照的だった。
一方、投手陣は695失点、チーム防御率4.35はリーグワースト。被本塁打143本はリーグ5位タイと苦しんでいる。2018年シーズン同様、投手陣を打撃陣がカバーした形でのリーグ制覇となった。
首位独走の2018年から一転、終盤の逆転劇
結果的にパ・リーグ2連覇をはたした西武だが、シーズンの駆け抜け方は前年から大きく変わっている。開幕カードでは前年の日本一であるソフトバンクに3連敗と出足は最悪だった。4月以降も一進一退の状態が続き、エンジンが掛かり始めたのは8月からだった。8月を17勝10敗で駆け抜けると、9月に入っても勢いは衰えず14勝7敗と2勝1敗ペースで勝ち進んだ。そのなかで初めて首位に立ったのは9月11日のこと。じつに130試合目で初めて首位に立ったのである。開幕から首位を一度も譲ることのなかった2018年シーズンとは対照的だった。
そのスパートを掛けた終盤の月間数字は興味深い。8月はチーム打率.299と3割まであと一歩に迫り、チーム防御率5.44という投手陣を救う。翌9月はチーム打率.255と打線が湿ったが、チーム防御率3.30と今シーズン最高の出来でラストスパートを演出。シーズンを通した通算成績で見ると投手陣は打撃陣に助けられっぱなしに映るが、そんなことはなかった。
【月間成績】
3・4月:打率.259/防御率4.51
5月:打率.255/防御率4.52
6月:打率.274/防御率4.16
7月:打率.241/防御率3.87
8月:打率.299/防御率5.44
9月:打率.255/防御率3.30
QS数はリーグ3位と先発は試合を作っている
失点、チーム防御率でリーグワーストとなっている西武だが、先発投手の指標であるQS(6回以上自責点3以下)数はリーグ3位タイの61回と悪くない。その他のチームを見るとリーグトップのオリックスが64回、2位のロッテが62回、そして西武、楽天、ソフトバンクの上位3球団が61回で並んでいる。つまり先発投手は他球団とほぼ同じように試合をつくっていたのである。
BB/9(1試合あたり何個の四球を出すかを表す指標)は3.57だった。リーグ5位だが、極端に悪い数字ではない。一方でK/9(1試合あたり何個の三振を奪うかを表す指標)は6.14となっており、リーグワースト。しかもリーグで唯一の6点台と極端に悪い。K/BBは1.72となり、これも唯一の1点台となる。
三振でも凡打でもアウトには変わらないが、凡打は打球が前に飛ぶことになる。そうすると、失策が生まれる可能性もあり、出塁のリスクは当然高くなる。ほぼ守備に左右されない三振を奪うことのできる投手を増やすことが、投手力改善に向けてのひとつの方策となりそうだ。