リーグ連覇最大の立役者
最大8.5ゲーム差を逆転し、劇的なリーグ連覇を果たした西武。その最大の立役者は、やはり森友哉だろう。2019年は年間を通じて好調を維持し、打撃成績は軒並みキャリアハイを記録。パ・リーグの捕手では1965年の野村克也(南海)以来となる首位打者を獲得し、シーズンMVPに輝いた。今回は、リーグ屈指の強打者へと上り詰めた森のバッティングを掘り下げていく。
最大8.5ゲーム差を逆転し、劇的なリーグ連覇を果たした西武。その最大の立役者は、やはり森友哉だろう。2019年は年間を通じて好調を維持し、打撃成績は軒並みキャリアハイを記録。パ・リーグの捕手では1965年の野村克也(南海)以来となる首位打者を獲得し、シーズンMVPに輝いた。今回は、リーグ屈指の強打者へと上り詰めた森のバッティングを掘り下げていく。
まず注目したいのが、ファーストストライクに対するアプローチだ。0ストライク時のスイング率を見ると、森は一貫してリーグ平均を大きく上回っており、浅いカウントから積極的にバットを出していることが分かる。近年は特にその傾向が強まり、2019年は規定打席到達者でリーグ2位となる45.4%を記録した。
そんな森に対する、相手バッテリーの配球も特徴的だ。変化球を決め球としてだけでなく、カウントを取る段階から多投しているのである。とりわけ、ここ2年間は0ストライク時の投球の64%を変化球が占めており、これはリーグ内の打者と比較してもトップクラスの高さだ。
追い込まれる前からどんどん振っていく森にとって、カウント球として投じられる頻度が高い変化球への対応は、重要なポイントといえる。そして、2019シーズンの森が見せた変化のひとつに挙げられるのが、このファーストストライクの変化球を高確率で引っ張っていたことだ。変化球は球速が遅いために引っ張りやすいという面もあるが、63%という割合は2018年までと比較しても明らかに高い。
一般的に、引っ張った打球は速度が出る分、長打になりやすい性質がある。2019シーズンの森も例外ではなく、ファーストストライクの変化球を捉えた35安打のうち、長打が実に19本。長打率.883は、リーグの規定打席到達者でも断トツだった。カウントが浅いうちは狙い球を絞る打者が少なくない中、本人いわく「配球は読まず、真っすぐを待っている」という森が変化球をこれほどまでに打ち込んだのは、驚異的な対応力というほかないだろう。
クリーンアップと正捕手という攻守の重責を担い、見事に結果で応えた森。オフには24歳の若さで選手会長に就任するなど、その存在感はますます高まっている。3年連続のリーグ優勝、そして12年ぶりの日本一という宿願の成就には、この男の力が必要不可欠だ。
※文章、表中の数字はすべて2019年レギュラーシーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:中村 碧聖