涌井秀章が楽天へ金銭トレードで移籍
楽天がまた動いた。ロッテから金銭トレードで涌井秀章の獲得を発表したのである。FAの鈴木大地に続きロッテから主力を迎え入れたことになる。2019年シーズンの3位からさらに上位を目指すために、オフの補強に余念がない。
今回の涌井のように金銭トレードで、主力級の選手が移籍することは珍しい。金銭トレードによる移籍は外国人選手や若手、ベテラン選手が多いため、戦力的な上積みはそれほど大きくない。そのため、移籍後に主力として活躍するケースも稀である。
そんな金銭トレードで移籍初年度(シーズン途中の移籍は当該シーズン)から活躍した選手はいるのだろうか。ここで2010年オフ以降(2011年が移籍初年度)の金銭トレードを振り返ってみたい。
小川龍也が優勝に貢献
涌井と同様、投手が移籍したケースは5件。その5選手の移籍初年度は下記のような成績だった。

2018年シーズン中に小川龍也が中日から西武に移籍したのが、直近の金銭トレードとなる。中継ぎ投手に不安のあった西武に入った小川は7月23日の公示だったが、8月初旬に一軍昇格を果たすとそこから15試合に登板。ワンポイント的な起用もあり、投球回数こそ11.1回と登板試合数より少ないが、1勝0敗4ホールド、防御率1.59と結果を残した。西武としては大きな補強となり、リーグ優勝に大きく貢献した。まさにピンポイントの補強となった事例といえるだろう。
2017年には谷元圭介が日本ハムから中日へと移籍した。シーズン中の金銭トレードだったが、移籍後は18試合に登板し防御率6.00。打ち込まれるケースが増え、期待に答えられたとは言い難い。2016年の藤岡好明は開幕直後のトレードだった。移籍直後から好投を続けたものの故障で離脱してしまい、4月27日に登録抹消されて以降、シーズン中に一軍復帰を果たすことはできなかった。
大場翔太と川島亮のふたりは新天地に移籍してから登板機会はなく、現役を引退している。
野手では渡辺直人とモヤが活躍
投手と比べると野手の金銭トレードの件数は多いが、移籍後にレギュラークラスとして活躍した事例は多くない。2019年シーズン中に移籍したスティーブン・モヤ、そして2010年オフの渡辺直人のふたりだけとなっている。

モヤはシーズン途中の移籍だったが、すぐにスタメン起用されキャリアハイとなる64試合に出場。レギュラー格としてシーズン後半戦を戦った。その活躍もあり2020年シーズンの契約も勝ち取っている。シーズン途中に中日から金銭トレードでパ・リーグへ移籍した選手では、3度の本塁打王に輝いたラルフ・ブライアント(中日→近鉄/1987年)がいる。打者のタイプは違えど、モヤもブライアント級の活躍となるか注目だ。
2011年に楽天から横浜(現・DeNA)へ移籍した渡辺は大きな波紋を呼んだ。前年も115試合に出場していたまさにレギュラー格であったからだ。この移籍が発表後、鉄平、草野大輔、嶋基宏といった当時の主力メンバーは涙を流した。ファンはもちろん、チームメートにまで大きな影響を及ぼしたのである。その渡辺は横浜で規定打席へと到達し、見事に結果を残した。その後、西武を経て再び楽天へと復帰。2020年シーズンも現役を続ける予定だ。
モヤと渡辺のふたりを除くと、移籍後に主力となったといえる選手はいない。どちらかというと、レギュラーとしてではなく、バックアップ的な役割での起用が多かった。
このように、金銭トレード後初年度に活躍をした選手は数えるほどしかいない。はたして涌井は楽天でどのような投球を見せてくれるだろうか。エースとして戦ってきた姿を取り戻すことに期待したい。
※数字は2019年シーズン終了時点