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楽天・田中和基、昨季新人王も不振の一年 直球への強さ取り戻せるか

2019 12/22 11:00浜田哲男
楽天・田中和基
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ⒸYoshihiro KOIKE

怪我と不振で離脱を繰り返した

プロ入り2年目の昨季は105試合に出場。打率.265、18本塁打、45打点、21盗塁の好成績をマークし、パ・リーグの新人王に輝いた楽天の田中和基。今季は走攻守でよりいっそうの活躍を首脳陣もファンも期待していたが、開幕前から相次ぐ怪我に悩まされ出場はわずか59試合。打率.188、1本塁打、9打点、3盗塁と低迷した。

チームはロッテとの熾烈な3位争いを制し、なんとかクライマックスシリーズ(CS)には出場したものの、田中が1番センターにどっしりと座り、昨季のような活躍を見せてくれていれば…と思っていたファンも多いはずだ。

全ての歯車が狂い始めたのは、シーズン前の台湾遠征中に行われた練習試合。同試合に出場した田中は右翼で打球を追っていた際に右足首を負傷。その後、戦列に復帰はしたものの、開幕から不振に陥った。さらに5月には左手首を骨折するなど、離脱を繰り返した。ようやく今季1号が出たのは8月10日のオリックス戦。最後まで打撃が上向くことはなかった。

まずは直球への強さを取り戻すこと

走攻守で高いレベルの能力を備え、将来はトリプルスリーの期待もかけられるほどの田中のまさかの大不振。スイッチヒッターであり左右両打席で本塁打を放つ力があることも魅力だが、今季は対右投手(自身は左打席)の打率が.208、対左投手(自身は右打席)の打率が.128と低迷。これまでのノーステップ打法から右打席だけ足を上げるフォームに変えるなど試行錯誤したが、結果にはつながらなかった。

球種別の打率をみると、昨季は.303と高打率をマークしていた対直球の打率が今季は.179に低下。力のある直球にも振りまけない力強いスイング、パンチ力が昨季は印象的だったが、打撃フォームを固めるためにも、まずは直球を力強く弾き返すことが喫緊の課題のひとつと言えそうだ。

また昨季は、パワーとスピードを兼ね備えた打者であることを示すセイバーメトリクスの指標PS(Power-Speed-number)で19.4をマークし、山田哲人(ヤクルト)、柳田悠岐(ソフトバンク)、外崎修汰(西武)らそうそうたる打者に次いで12球団4位の成績を残した。まずはコンディションを万全にし、打撃フォームに手応えをつかみ、レギュラー争いに勝つという壁があるが、田中のポテンシャルは誰もが認めるところ。再びトリプルスリーを狙える打者であることを来季は証明してほしい。

今季の苦い経験と悔しさを来季へ

今季、センターのスタメンとして最も多く起用されたのはルーキーの辰己涼介だった。124試合に出場し、打率.229ながら出塁率は.320をマーク。13個の盗塁を決め、俊足や強肩を生かした守備でもアピールした。田中の怪我や不振の影響もあり、辰己は出場機会を多く得ることができた。様々な経験を積んだことで、来季の飛躍も期待できる。首脳陣は田中が昨季のような調子を取り戻し、辰己やオコエ瑠偉らと高いレベルで外野レギュラー争いをすることを求めているだろう。

また内野手ではあるが、今年のドラフト1位で小深田大翔(大阪ガス)を即戦力の遊撃手として獲得。50m5秒9の俊足とシュアな打撃を武器に虎視眈々とレギュラーの座を狙う。タイプ的には1番打者向きでもあり、守備位置は違えども1番を争うライバルとなりえる存在だ。

本来であれば飛躍のシーズンとして、1番センターのポジションを確固たるものとしたかった田中だが、今季の不振によりレギュラー争いは横一線。ロッテから鈴木大地、パドレス傘下マイナーから自由契約となっていた牧田和久を獲得するなど、チームは戦力を着々と整えているが、田中も楽天が巻き返していくためのキーマンのひとりだ。怪我や不振、打撃フォームの試行錯誤など、悩み抜き不完全燃焼に終わった今季の苦い経験と悔しさを来季にどう生かすのか。田中の奮起に注目したい。