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球場を彩る登場曲の演出 『ベイビー・シャーク』は球場一体の応援で定番となるか

2019 12/25 06:00勝田聡
パーラの登場曲に合わせてサメダンスで盛り上がるナショナルズファン
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Ⓒゲッティイメージズ

球場を彩る音

野球には多岐にわたる「音」がある。ボールの捕球音、バットがボールをとらえる音、バットが空を切る音、スパイクが地面を蹴る音、選手たちの掛け声、観客の声援、ブラスバンドの演奏、選手の応援歌、場内アナウンス、スタジアムDJのパフォーマンス……。どれひとつをとっても味わいがあり、重なり合って野球をより味わい深くしている。

そんな野球に関わる音のひとつに選手の登場曲がある。出囃子と呼ぶファンもいる、選手が打席に入る前やマウンドに登る前に流される曲である。一般的に登場曲は本拠地の試合のみで流される。たとえば、ヤクルトであれば神宮球場でのみ聞ける(一部地方開催あり)。

そのため神宮球場で行われるヤクルト対巨人の試合では、巨人の選手の登場曲が流れることは基本的にない。「基本的に」というのは例外があるからだ。

ビジターチームの選手が引退を表明した場合など、演出で流されることもある。実際に2017年10月3日に行われた神宮球場でのヤクルト対巨人の試合では、すでに引退を表明していた相川亮二(巨人)が代打で登場すると、古巣・ヤクルト時代の登場曲が球場に響き渡った。

球団の垣根を超え、広く知られている曲も

2019年現在、球団の垣根を超えて知られている登場曲は、山﨑康晃(DeNA)の『Kernkraft400』(Zombie Nation)だろう。山﨑が登場するとこの曲に乗ってファンがジャンプする、いわゆる「康晃ジャンプ」は、横浜スタジアムでおなじみの光景だ。オールスターゲームなどでは球場全体で康晃ジャンプが行われ、圧倒的な認知度を誇っているとよくわかる。

人気選手になればなるほど登場曲は多くのファンから認識される。打席や投手登板直前にイントロが流れると、それだけで球場の温度が上がるといっても過言ではない。

たとえば、投手だと東京ドームで流れた上原浩治(巨人)の『Sandstorm』(Darude)、野手だとメットライフドームでの秋山翔吾(西武)『人にやさしく』(THE BLUE HEARTS)。秋山の場合は曲の途中に合いの手が入り、ファンはひとつになった。

おもしろいところでは塩見泰隆(ヤクルト)の『G1ファンファーレ(中山競馬場)』(アナハイム)だろうか。神宮球場でこの登場曲が初めて流れたときはどよめきが起こったほど。その後はファンも慣れたのか数週間後には、掛け声や手拍子も競馬場のそのものとなった。神宮球場のライトスタンドが、まさに競馬場のような雰囲気になるのである。野球ファンと競馬ファンの親和性が高いのか、両者ともにフジテレビが近い関係だからなのかはわからないが。

『ベイビー・シャーク』が新たなブームとなるか

2020年の定番となりそうな登場曲は、MLBのナショナルズから巨人に加入するヘラルド・パーラの使う、童謡『ベイビー・シャーク』だ。ナショナルズでは、リズムに合わせ観客は両腕を前に伸ばして手を上下にたたき、サメの口のような動きをする。子どもから大人まで広くこのダンスが行われ、着ぐるみを着るファンもいるほどの人気だった。ちなみに日本では今季、森友哉(西武)も同様の登場曲を使用した。

パーラが巨人でも同じ曲を使うか現時点で不明だが、使えば東京ドームは盛り上がるだろう。ビジターゲームでは登場曲が流れないにしても、ダンスは行われるかもしれない。

球場での野球観戦は、選手の迫力あるプレーや球場全体の一体感という大きなメリットがある。このライブ感はテレビやインターネット観戦では味わえない。

一体感を生み出す演出のひとつである登場曲にも注目すると、現地での野球観戦が今まで以上に楽しくなるはずだ。