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筒香嘉智はレイズでレギュラーになれるか 求められる柔軟性と確実性

2019 12/17 06:00棗和貴
レイズへの移籍が決まった筒香嘉智ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

筒香、2年13億円超でレイズへ

DeNAからポスティングシステムでメジャー挑戦を目指していた筒香嘉智の移籍先が、タンパベイ・レイズに決まった。地元紙タンパベイ・タイムズによると、契約は2年1200万ドル、日本円にして約13億1000万円。レイズは、ヤンキースやレッドソックスなど、名門チームが集まるア・リーグ東地区に所属する。2019年シーズンは地区2位となり、6年ぶりとなるプレーオフに進出。リーグ地区シリーズまで進むが、2勝3敗で惜しくもアストロズに敗れた。

レイズは、少ない資金源というハンディキャップのなか、革新的なアイデアでチームを強くしてきた。ベンチ入り25人の総年俸は“金満球団”ヤンキースの3割程度。全30球団のなかでも下から4番目という低予算でありながら、勝率7位(96勝66敗、勝率.596)という成績をおさめられたのは、日本でも導入されているオープナーをはじめとした革新的な野球のためである。

また、金のかかるFAに頼らず、若手を積極的に起用している球団でもある。筒香は、チームを選ぶ際に出場機会を優先するとの報道があったが、彼が入ることになったレイズには、ライバルとなる若手の有望株がたくさんいるのだ。

筒香に求められる「柔軟性」と「確実性」

レイズへの移籍が決まった筒香だが、ポジションについては日本での定位置だったレフトだけでなく、DHを含めた複数のポジションを守ることが予想されている。レイズの外野は、レギュラーがほぼ確定しているためだ。

センターにはゴールドグラブ賞の常連であるケビン・キアマイアーがおり、ライトは今季大ブレークを果たしたオースティン・メドウズが守ると予想されている。残るレフトについても、先日トレードで外野手のハンター・レンフローを獲得した。今季は後半戦で失速したものの、前半戦はホームラン27本、OPS.921を記録した強打者である。打撃に目が行きがちであるが守備の評価も高く、今季はゴールドグラブ賞の候補者にノミネートされるほどだった。筒香はこのレンフローとレフトのポジション争いを繰り広げることになるだろう。

また、日本での守備機会が少ないサードやファーストを守ることも考えられる。というのも、レイズの内野は流動的な起用が予想されるからだ。とくにサードに関しては、今季30球団のなかで唯一50試合以上先発した選手がおらず、来季も相手投手の利き手や相性によって様々な選手が使われることになるだろう。筒香は、DHを含むさまざまなポジションにつくことで、より多くの試合に出ることが期待されている。

このように守備では複数のポジションをこなす柔軟性が求められるが、打撃では確実性が鍵となる。もちろん筒香の最大の魅力はパワーだが、米スポーツサイトのジ・アスレチックスでは、三振の少なさや四球率の高さもストロングポイントとして紹介されている。確かに、四球率は今季セ・リーグ3位の15.8%を記録。三振率は今季こそ悪かったが、2018年シーズンは30ホームラン以上打ったセ・リーグの選手のなかで最も低い数字だった(18.4%)。

現在、フライボール革命がMLBを席巻しているが、その反動として三振の多さが指摘されている。“革新球団”レイズは、次なる野球のムーブメントとして、筒香の確実性に新たな兆しを見出しているのかもしれない。

筒香、新たな挑戦へ「ファンの声援で、いまの自分がある」

「いろんな想定をして、いろんな準備をして、自分の引き出しのなかで柔軟に対応していきたいと思います」

10月29日、メジャー挑戦を表明した会見で筒香はそう語っていた。表情に笑みはなく、その顔からは確固たる決意が感じられる。そして「柔軟に対応したい」という言葉。それは、出場機会を優先すると言いつつも、どのチームに行ったとしても生易しいものではないという覚悟の表れではないだろうか。

また、その会見は“第二の故郷”である横浜への感謝であふれていた。「ファンのあたたかい声援で、いまの自分がある」と筒香。2009年、横浜高校からドラフト1位で入団したものの、結果はなかなか出なかった。プロに入って最初の数年間は焦った時期もあったという。ここまで彼が歩んできた道のりは決して平坦ではなかったのだ。

念願のメジャーリーグへ。筒香の新たな挑戦が始まる。