セットアッパー問題を解決
今オフ、元楽天の美馬学、元ソフトバンクの福田秀平の入団が決まり、着々と戦力を整備しつつあるロッテ。12月4日には、元広島で今季はメジャーのブリュワーズに在籍していたジェイ・ジャクソンの獲得を発表した。
昨季は最終回こそ益田直也がクローザーとして君臨したものの、勝ちパターンの7回、8回で投げる投手を最後まで試行錯誤。終盤に追いつかれ、逆転されるというケースも散見された。ロッテの松本尚樹球団本部長は、「7回、8回を固定したい」という構想を明かしており、そこを任せるセットアッパーとして日本での経験豊富なジャクソンに白羽の矢を立てた形だ。
ジャクソンは2016年から3年間にわたって広島に在籍。通算175試合に登板して10勝(8敗)、102ホールドポイント、2セーブ、防御率2.10と安定感抜群の成績を残している。また、今季在籍していたブリュワーズでは28試合に登板。防御率は4.45ながら投球回を大きく上回る三振を奪うなど健在ぶりを示した。
特筆すべきは広島に在籍した3年間で、チームはリーグ3連覇。強い広島のブルペンを支え続け、勝者のメンタリティが備わっていることも魅力。来季はAクラス争いではなく優勝争いを目指すロッテにおいて、セットアッパーの補強は喫緊の課題のひとつであり、そのピースとなりうる最適な補強となった。
奪三振率は脅威の13.96
広島時代と同様の活躍を期待するファンは多いだろうが、実際にはどうだろうか。今季のメジャーの投球をみるかぎりは、150km台中盤の直球、縦と横に鋭く大きく曲がる2種のスライダーは健在で、年齢もまだ32歳ということも踏まえれば、心配することはなさそうだ。
ジャクソンは、今季30回1/3に登板して奪三振数は47個。奪三振率は13.96と凄まじい数字を残している。ちなみに、今季69回2/3を投げて107個の三振を奪った楽天の松井裕樹の奪三振率が13.82(パ・リーグのクローザーでトップ)。メジャーと日本の野球ということで単純な比較はできないが、ジャクソンのそれは、驚異的と言われた松井の奪三振率をも上回っている。
走者をためた場面で三振がとれることは大きな武器。かつて主に8回を任されていた薮田安彦が、フォークを武器にピンチで三振を奪って切り抜けていたように、奪三振能力のあるセットアッパーの加入は吉井理人投手コーチにとっても心強いはずだ。
優勝請負人としての期待
最大の武器は変化の大きい縦・横2種のスライダー。広島での1年目は、投球の約43%を占めており、89個奪った三振のうち、56個が同球種によるものだ。被打率も.128と圧巻の数字を残している。広島での最後のシーズンとなった2018年にはチェンジアップの投球数も増やし、被打率は.167。最速156kmの直球、2種のスライダーにチェンジアップを織り交ぜ、投球の幅を広げていた。
何よりも日本の球場のマウンドやボールを経験するなど日本の野球を知っている上、確かな実績を築いていることが大きい。クイックに適応できない外国人投手もいる中で、広島時代には一塁への牽制で刺してピンチを切り抜ける場面もあるなど、そうした点での心配がないことも魅力だ。
ロッテは今季、終盤の7回、8回を酒居知史、唐川侑己、東條大樹、田中靖洋、チェン・グァンユウ、中村稔弥、東妻勇輔、松永昴大らでやりくりした。調整の意味合いも兼ねていたこともあったが、本来は先発の石川歩が一時は8回を任されるなど、シーズンを通して試行錯誤が続いた。
時にはイレギュラーもありつつも、基本的には終盤の7回、8回、9回に投げる投手が決まっているということは、チームの強みとなり相手にとっても脅威となる。ジャクソンがそこにしっかりとはまれば、来季もクローザーが有力視される益田と共に勝ちパターンの形が見えてくる。他のリリーフ投手たちにとってもその存在が刺激となり、相乗効果も生まれるかもしれない。
今季加入したレアードにしろ、フリーエージェント(FA)で移籍してきた美馬学や福田秀平にしろ、過去に所属したチームで優勝や日本一を経験してきた。広島のリーグ3連覇に大きく貢献したジャクソンにも、優勝請負人としての期待がかかる。