2015年GG賞・エスコバーを獲得
高津臣吾新監督体制となったヤクルトは、このオフに新外国人選手として2015年のアメリカン・リーグ、ゴールドグラバ−であるアルシデス・エスコバーの補強を行った。その他にも経験豊富な捕手として嶋基宏(前・楽天)、貴重な左腕として長谷川宙輝(前・ソフトバンク)もチームに迎え入れている。
また、国内FA宣言をした美馬学(楽天)の争奪戦にも参加。結果として獲得には至らなかったものの、最下位から上位浮上へ掛ける意気込みが伝わってくる。
また、ドラフト会議では奥川恭伸(星稜高)を1位指名。未来のエース候補が仲間に加わった。2位以下では大学生の投手を3名指名しており、投手陣の強化を重点的に行なった格好だ。
もちろん新戦力での上積みは、順位を上げるための重要な要素であることは間違いない。しかし、既存のメンバーたちの底上げももちろん必要だ。2019年シーズンからの底上げに期待したい選手を投打で取り上げたい。
初の2桁本塁打に到達した廣岡大志
野手陣では高卒2年目の村上宗隆が36本塁打で新人王に輝くなど大ブレイク。山田哲人も打率こそ3割には届かなかったが、本塁打と盗塁はともに「30」をクリアした。ウラディミール・バレンティンの去就が不透明ではあるが、村上と山田2人の並びは強力だ。
しかし、現時点で実績のある長距離砲と呼べる存在はこのふたりだけ。新外国人のエスコバーも本塁打を期待するタイプではなく巧打型であり、一発の魅力あふれる選手ではない。
そのなかで、次代の長距離砲候補として期待したいのが、廣岡大志である。未完の大器として毎年のように期待されている廣岡だが、ここまでレギュラーを奪うには至っていない。しかし、2019年シーズンは序盤こそ苦しんだが、後半戦で本塁打を量産し自身初となる2桁本塁打も記録した。
8月、9月の2ヶ月間で、34試合(96打数)に出場し8本塁打を放っている。これは本塁打率(1本塁打あたりに必要な打数)に換算すると12.0となり、バレンティンの12.42をも上回っている。もちろん、シーズンを通じてこの数字を残せる保証はないが、希望の持てる数字であることは間違いない。
現時点の陣容を見ると、遊撃、もしくは三塁での起用が既定路線になる。しかし、エスコバーに2019年シーズンは故障で離脱していた西浦直亨、太田賢吾に奥村展征とライバルは多い。さらには、村上もフェニックス・リーグでは三塁の守備位置についた。
高卒5年目となる2020年シーズン、廣岡は並み居るライバルたちとの争いを勝ち抜き、レギュラーの座を掴むことができるだろうか。
高卒5年目となる高橋奎二の奪三振率に注目
一方の投手陣ではエース小川泰弘がチームで唯一、規定投球回に到達した。しかし、5勝12敗、防御率4.57は物足りない。この小川の復活は大前提だが、それ以降に続く若手投手の台頭が求められる。
なかでも期待されるのが左腕の高橋奎二だ。2019年シーズンは小川(26試合)、石川雅規(23試合)に次ぐチーム3位の19試合に先発。キャリアハイとなる4勝(6敗)をマークし、飛躍の一歩手前まできたと言っても過言ではない。高橋の売りは奪三振率(1試合に何個の三振を奪うかを表す指標)の高さにある。
高橋は95.1回を投げ99奪三振と奪三振率は9.35。1回に1個以上の三振を奪う計算だ。これはチームの先発投手(10先発以上)では高梨裕稔についで2位の数字。また、セ・リーグの規定投球回到達者でも奪三振率が9を超えているのは、山口俊(巨人)と今永昇太(DeNA)の2人しかいない。
少し気は早いが、しっかりと先発ローテーションを回ることができれば、最多奪三振のタイトルも夢ではない。
高橋も廣岡も2020年が高卒5年目のシーズンとなる。まずは1年間、一軍で戦力となり、チーム内での地位を確立させたい。若い力が育てば、自然とチーム力は上がってくる。
※数字は2019年シーズン終了時点