チーム最多の68試合登板、セーブ王獲得
捲土(けんど)重来のシーズンといっていいだろう。昨季は開幕から調子が上がらず、3年間務めてきたクローザーからの配置転換も経験した楽天・松井裕樹。「例年になく気持ちを入れて準備した」という今季は、チーム最多の68試合に登板、自身初の最多セーブのタイトルを獲得し、見事に守護神の座へ返り咲いてみせた。

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捲土(けんど)重来のシーズンといっていいだろう。昨季は開幕から調子が上がらず、3年間務めてきたクローザーからの配置転換も経験した楽天・松井裕樹。「例年になく気持ちを入れて準備した」という今季は、チーム最多の68試合に登板、自身初の最多セーブのタイトルを獲得し、見事に守護神の座へ返り咲いてみせた。

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そんな松井の復活劇に迫る上で、注目したい球種がある。130キロ台中盤で小さく曲がるスライダーだ。もともと松井のスライダーは縦に大きく曲がるボールだったが、昨季の夏場に現在のカットボールに近い変化へと改良。2017年に投げていた従来のスライダーと比較すると、今季のスライダーは平均球速が8キロ以上アップし、奪空振り率もリーグトップクラスにまで上昇している。

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スライダーの改良による変化は、配球にも表れた。今季はスライダーの投球割合が29%と、前年から大幅に増加したのである。プロ入り後はチェンジアップを最大の武器としてきた松井にとって、スライダーをチェンジアップより多く投じたのは、6年目で初めてのこと。ピッチングの組み立てを大きく変えるほど、現在のスライダーに強い手応えを感じているのだろう。

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そして、このスライダーはウイニングショットとして有効に機能した。従来のスライダーは左打者への決め球に使うケースが多かったが、今季は右打者に対しても多投。結果として、スライダーで奪った三振の数は40個と、前年の倍以上に増加した。リーグでも山岡泰輔(オリックス)に次ぐ2位タイの多さで、スライダーの改良がいかに効果的だったかを物語っている。

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伸びのあるストレートとブレーキの利いたチェンジアップに加え、スライダーという新たな“伝家の宝刀”を手にした松井。今季は107奪三振をマークしたが、これは2000年以降の救援投手ではリーグ最多だった。しかし松井は、3位に終わったチームの成績と、自身が38セーブを挙げながら8敗を喫したことに触れ、「負けの数が少しでも減っていれば2位や1位も見えていた」とさらなる高みを見据える。来季は東北に7年ぶりの歓喜をもたらすべく、完全無欠の守護神として君臨する。
※文章、表中の数字はすべて2019年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:矢島 慎太郎