ヤクルト、A・エスコバーを獲得
昨季2位から今季最下位に転落したヤクルト・スワローズは、早速チームの立て直しを図った。小川淳司監督と宮本慎也ヘッドコーチが退任し、二軍監督を務めていた高津臣吾氏が新監督に就任。就任会見では「スワローズらしく。いい伝統を継承しつつ、明るいチームにしたい」と来季の抱負を語った。
今季のチーム防御率が両リーグワーストの4.78だっただけあって、今オフは投手陣の整備に関する話題が多い。ドラフトでは3球団が競合した奥川恭伸(星稜高校)をはじめ、上位4人が投手だった。また日米で豊富な経験を持つ斎藤隆氏が投手コーチに就任した。
一方で、野手の補強にも着手している。10月30日には新外国人としてアルシデス・エスコバーの獲得を発表した。エスコバーは2008年にメジャーデビューを飾ると、MLB通算で1437試合に出場。2019年シーズンはメジャーリーグでの出場機会はなかったが、ロイヤルズ時代の2015年にはチームのワールドシリーズ制覇に貢献し、ア・リーグ優勝シリーズではMVPにも輝いた。11年に及ぶMLB通算成績は、打率.258、1367安打、ホームラン41本となっている。
2015年にGG賞受賞、ロイヤルズ史上最多のスタメン数
エスコバーの最大の魅力は守備である。メジャーリーグでは主にショートを守り、2015年にはゴールデン・グラブ賞を受賞している。ただ、2015年の守備に関するスタッツを見てみると、エスコバーの成績はリーグトップとは一概に言えない。
アメリカのデータサイト、ファングラフスによると、2015年のUZR (Ultimate Zone Rating:守備全般での貢献度)は、規定を満たしたア・リーグの10人の遊撃手のうち3位となる7.0。DRS(Defensive Runs Saved:守備によって失点をどれだけ防いだかを示す指標)にいたっては、平均以下を意味するマイナス1だった。
だが、エスコバーをよく知る球団スタッフやチームメイトたちは、エスコバーがGG賞にふさわしいと主張した。ロイヤルズのあるスカウトはデータを否定しているわけじゃないと前置きをしつつ、「エスキー(エスコバーのニックネーム)が他の選手より下になるためには、入力されたデータがおかしくなっている必要がある」と語っている。
また、当時同僚だったエリック・ホズマーも数字には表れないエスコバーの能力を認める発言をしている。「並みの守備範囲のショートだったらできないプレーが彼にはできる。普通なら届かない打球が彼なら届く。エスコバーの失策はそのためだね。彼はスーパースターだよ」
確かに、50年以上にも及ぶロイヤルズの歴史において、エスコバーはショートで歴代最多の先発出場数(1205試合)を記録。守備率も300試合以上出場したショートのなかで歴代3位タイの.978を誇っている。ロイヤルズの歴史に残る遊撃手であることは間違いなく、そのプレーを日本で見ることができるとなれば期待も膨らむ。
打力の評価は?
打撃に関して取り立てて伝える点はないが、気になるのはチェイス・レート(Chase%:ボール球をスイングした割合)がMLB平均より6.6ポイント高い34.9%だったことだ。一般的にNPBの投手はボールの出し入れがうまいと言われている。ボール球に手を出さず、いかにストライクゾーンで勝負させるのかが、バッティングの鍵になりそうだ。
また、ヤクルトの編成部国際担当部長は長打力があるとコメントしているが、エスコバーのMLB通算の長打率は.343と長打力が期待できる数字ではない。ただし、ヤクルト屈指のスラッガーであるバレンティンもMLB通算の長打率は.374だった。エスコバーの打力も、守備のように数字には表れにくいのかもしれない。