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西武・森友哉の天才的打撃を裏付ける勝負強さ、積極性、弱点の少なさ

2019 11/27 06:00浜田哲男
埼玉西武ライオンズの森友哉ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

さらなる進化を見せつけた

今季も圧倒的な打撃力を見せつけ、リーグ連覇を達成した西武。中でも、史上4人目となる捕手での首位打者を獲得した森友哉の打撃は圧巻だった。

今季、135試合に出場した森はマスクをかぶりながらも打率.329とハイアベレージをマークし、23本塁打、105打点と申し分のない成績を残した。さらに、OPS(出塁率+長打率)はリーグトップの.959、チャンスにも強く得点圏打率.411もリーグトップ。

プロ入り1年目の2014年には、高卒ルーキーながら打率.275(80打数22安打)6本塁打と才能の片鱗を見せ、翌年には打率.287、17本塁打、68打点でブレイク。以降もコンスタントにアベレージを残し続け、今季はさらなる進化を見せつけた。今回はそんな森の打撃の凄さに迫ってみたい。

天才的なバットコントロール

まず挙げたいのが、天才的なバットコントロールだ。森といえば豪快なフルスイングというイメージが強い。だが、地面すれすれの変化球を拾い上げ、逆方向へ運ぶケースも散見された。

タイミングを外されても強靱な足腰で踏ん張りつつ、柔らかい腕の動きでボールをとらえてヒットゾーンへ運ぶ。スイングはアッパー気味だが、しっかりと右足を踏み込み、基本に忠実にインサイドからバットが出て体の近くでまわしているため、ボールに力が伝わりやすい。

圧巻だったのは7月8日に東京ドームで行われたソフトバンク戦。ルーキー甲斐野央の高速フォークにバットを軽く合わせ、ボールをレフトスタンド最前列まで運んだ。甲斐野の直球は常時150km台後半で、フォークも140km台。体勢を崩されることなく逆方向へ運んだ打撃は、反応といい、腕の使い方といい、天才的だった。

ゾーン別の打撃成績をみると、どのコースも満遍なく打っている。ど真ん中の打率は.477とほとんどとらえており、真ん中低めも.375。内角にも滅法強く、内角高めは.300、内角は.333、内角低めは.302といずれもうまく対応している。内角の厳しいところを突かれても、ファウルにすることなく右翼線に運ぶ打撃は今季幾度となく目にした。

広角に本塁打が打てる

広角に本塁打が打てる森は、豪快に引っ張りライトスタンドに放り込むこともあれば、ボールを押し込み逆方向へも運ぶ。今季放った23本塁打のうち、ライトへの本塁打は10本、センターが6本、レフトへも7本と、広角に本塁打が打てることを証明している。

方向別の打率はライト方向の打率が.593と異常に高く、センター方向の打率は.309。一方、レフトへの打率は.210と落ち込む。変に逆方向への軽打を意識しない振り切る打撃が好調のバロメーターになっていると考えれば、現状の打球方向別打率で十分であり理想。だが、今後逆方向への安打が増え始めたらますます手がつけられなくなることは確かだ。

また、7月27日のソフトバンク戦では1試合に3本の本塁打を放った。今季はこのほかにも2打席連発という場面もあるなど、本塁打の固め打ちをできるのも魅力だ。

チャンスでの強さ

数字から、勝負強いイメージを持たれている森。

走者二塁の状況での打率は.463、三塁に置いた場面でも.545、一三塁では.500のハイアベレージ。そして圧巻なのが満塁時の打率.571だ。今季は満塁本塁打も2本放っており、技術だけでなく強いメンタルも持ち併せていることがわかる。

先制打・同点打・勝ち越し打・逆転打などを合計した殊勲打回数は、リーグ7位の23回と、勝負強い打撃でチームの勝利に大きく貢献している。

弱点の少なさや積極性も強み

通常、対戦するバッテリーは打者の苦手なコースを徹底的に突き、ここぞというカウントで苦手な球種を投げるなど思慮する。しかし、森には際だった弱点が見当たらない。

ゾーン別の打率については前述したが、最も打率の低い外角低めでも打率.258、3本塁打をマークしているし、対右投手の打率は.329で対左投手の打率は.331と投手の左右も苦にしていない。球種別の打率をみても、対フォークの打率が.233と低いほかはどの球種に対しても3割5分前後のハイアベレージを残している。

また、カウント別の打率をみると、カウント0-0の打率が.455。23本塁打のうち、9本塁打を同カウントで打っており、積極的な打撃も魅力。初球の入り方にしても、追い込んでからにしても、これだけ神経を使わされる打者はなかなかいない。

侍ジャパンにもメリットをもたらす

プレミア12では28名だったロースターが、東京五輪では24名になる。各ポジションの人選は非常に悩ましくなるが、森の打撃力は捨てがたい。当然、五輪のタイミングでのコンディションが最重視されるはずだが、今季のような打撃が来季も維持できていれば、是非とも加えたいプレーヤーだ。森が入ることによって、どうしても課題となる捕手の不足と打線のさらなる強化の両方を実現することができる。

昨季は.373をマークした盗塁阻止率が、今季はリーグ5位の.283に低下した上、失策9個、捕逸12個はリーグワーストと守備に少々の不安を抱えるが、盗塁阻止率と捕逸に関しては投手との兼ね合いもある。いずれにせよ森の打撃力は魅力で、DHで生かすことを基本線として、いざという時に捕手という考え方もあるだろう。

今や、日本を代表する打者のひとりに上り詰めたと言っても過言ではない。打者としても捕手としても、森のさらなる飛躍に期待したい。