巨人に4連勝で60年ぶりG倒
プロ野球の日本シリーズはソフトバンクが4連勝で3年連続10度目の日本一に輝いた。昨年に続いてリーグ2位からの「下剋上」を達成。最近10年間でセ・リーグ全球団を破って6度目の優勝となり、工藤監督が10度、宙を舞った。
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ソフトバンクが巨人と戦う日本シリーズは、王ダイエーと長嶋巨人が激突した「ON対決」以来19年ぶり。前身の南海時代も含めて、過去10度は1勝9敗と苦汁をなめてきたが、1959年以来60年ぶりのG倒日本一を果たした。
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さらにクライマックスシリーズ・ファーストステージ第2戦からポストシーズン10連勝の新記録、日本シリーズだけでも広島と戦った昨年の第3戦から史上最長タイの8連勝と、記録ずくめの日本一となった。
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60年前は杉浦が4連投4連勝
日本シリーズの優勝回数は、これでセパともに35度ずつのタイとなった。21世紀に入ってからはパ・リーグの14勝5敗、特に最近は2012年の巨人を最後にセ優勝チームは7年連続敗退しており、パ・リーグの強さが際立っている。中でも安定して高い実力を保っているのがソフトバンクだ。
前身の南海ホークスは1950~60年代、我が世の春を謳歌した。「親分」と呼ばれた鶴岡監督の下、飯田徳治、岡本伊三美、蔭山和夫、木塚忠助らで「100万ドルの内野陣」を形成した50年代前半から、広瀬叔功、野村克也、ハドリらで「400フィート打線」を形成した60年代半ばまで、リーグ優勝9回、2位8回という無類の強さを誇った。
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投手陣も豪華だった。特に立教大学で長嶋茂雄と同級生だった杉浦忠は1年目から27勝を挙げて新人王に輝き、2年目の1959年には38勝4敗という驚異的な成績で優勝に貢献。日本シリーズでは長嶋のいた巨人打線を封じて4連投4連勝し、見事に日本一をつかんだ。
勝率では鶴岡南海が上
半世紀が経ち、令和のパ・リーグは南海からダイエーを経てホークスを受け継いだソフトバンクが黄金時代を築きつつある。工藤監督の指揮の下、松田宣浩、内川聖一、柳田悠岐、今宮健太ら充実の野手陣と千賀滉大、武田翔太らの投手陣がかみ合っている。
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では、かつての南海とソフトバンクはどちらが強いのか。時代が違えば野球も違うため比較するのは難しいが、鶴岡監督(旧姓・山本)は1リーグ時代の1946年から1968年まで指揮を執っており、最も強かったと思われる1950年から66年までの勝率を計算すると.625。試合数は3倍以上にもかかわらず2015年から19年の工藤監督の通算勝率.608を上回っている。
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仮に鶴岡南海が日本一に輝いた1959年、1964年とソフトバンクの最近3年間の成績を比較してみた。同じチームでも戦力は少しずつ変わるためシーズンによって数字は違うが、総得点や本塁打数は2018年のソフトバンクが最多。破壊力では鶴岡南海より上と言えるだろう。ただ、リーグでは2位だった昨年と今年は失点が多く、無敵の強さとまでは言えない。
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杉浦忠が南海の監督を務めていた1988年オフ、球団経営が行き詰まり、ダイエーに身売りが決まった。翌年から福岡ダイエー・ホークスとして生まれ変わることになり、大阪球場で行われた最終戦後のセレモニーで「ホークスは不滅です」と声高らかに誓った。
あれから31年。低迷期を乗り越え、ソフトバンクは鶴岡南海でさえ果たせなかった3年連続日本一を達成した。「強いホークス」の伝統はしっかりと受け継がれている。