名誉挽回の2019シーズン
2019年は中日・大野雄大にとって名誉挽回のシーズンとなった。13年から3年連続で2ケタ勝利を果たした左腕も16年以降は不本意なシーズンが続き、昨季は0勝に終わる屈辱を味わった。だが、昨秋から指揮を執る与田監督に「170イニング」を期待されて迎えた今季は、開幕から安定した投球を披露。終わってみればリーグ最多の177回2/3を投げ、自身初となる最優秀防御率のタイトルを手にした。では、今季の大野が好調だった要因は何だろうか。
球種別の被打率を見ると、どの球種も上々の数字を残している。中でも、9月23日の広島戦で自己最速の152キロをマークしたストレートは被打率.206と有効だった。また、ストレートで奪った三振は86個とリーグ最多で、投球の軸となるストレートの好調が今季の成績に与えた影響は大きいだろう。
シーズン序盤と終盤で明らかな変化
そして、前述のとおり大野は決してストレートだけの投手ではない。球種の投球割合を2カ月ごとで分けると直球が徐々に減り、代わりにツーシームとフォークが増加していた。ツーシームは主に右打者、フォークは左打者に投じている球種で、シーズンの序盤と終盤ではそれぞれ10ポイント近く増えている。
これらはバッターから見て落ちる、あるいは沈むような軌道の球種で、スイングした際バットの下側に当たりやすい。つまり、打球がゴロになりやすいのだ。この特徴が発揮されたか、両球種の割合増加と比例するようにゴロ打球の割合も上昇していた。
ゴロ打球の84.3%がアウトに
さらにゴロ打球の84.3%がアウトになっていて、セ・リーグでは頭一つ抜けている。このゴロアウト割合の高さも、大野復活の一因といえるだろう。なお、今季の中日はリーグ新記録のシーズン守備率.992をマークし、今季を含めて3年連続でゴロアウト割合がリーグトップだった“守り”のチーム。大野にとって今季ほど自軍の守備陣を頼もしく感じたシーズンはなかったかもしれない。
力強いストレートとゴロを打たせる変化球のコンビネーションで復活を果たした大野。史上81人目となるノーヒットノーランを達成した9月14日の阪神戦も、9奪三振にゴロアウト13個と、今季のピッチングを象徴するような内容だった。7年連続のBクラスとはいえ、9月を14勝9敗と悪くない形でシーズンを終えた中日。来季こそAクラスへ、昇竜の勢いは頼れるエースがつくり出す。
※文章、表中の数字はすべて2019年レギュラーシーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:伊丹 雄斗