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「久保イズム」吸収したソフトバンク投手陣を巨人打線は攻略できるか

2019 10/19 06:00楊枝秀基
今季13勝を挙げたソフトバンク・千賀ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

日本シリーズは19年ぶり“ON対決”

令和最初の日本シリーズは、昭和のレジェンドにゆかりのある両チームに決まった。両リーグ、13日まで行われたクライマックスシリーズ・ファイナルステージ( CSファイナル)の結果、パ・リーグはソフトバンク、セ・リーグは巨人が勝ち抜け。両軍の顔合わせは王ダイエーと長嶋巨人が激突した2000年以来19年ぶりとなる。現在は王ソフトバンク球団会長、長嶋終身名誉監督と立場は変わったが、あのミレニアム決戦以来のON対決に注目が集まる。

2000年日本シリーズⒸSPAIA

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役者は揃った。パ・リーグはシーズン2位のソフトバンクが西武に対し4連勝でスイープ。リーグ2連覇の西武から、2年連続で日本シリーズ出場権をもぎ取った。結果としてソフトバンクは19回目の日本シリーズ進出で3連覇を狙うことになる。

シーズン中は万全の戦いとはいえず、主力に故障者が続出したが終盤に復帰ラッシュ。それでも、リーグ優勝こそ逃したが最後は選手層の厚さがものを言った形だ。

セ・リーグは5年ぶりに巨人がリーグ優勝を果たした。3位からの下剋上を狙う阪神をCSファイナルで下して日本シリーズ進出。4戦3本塁打などでシリーズMVPに輝いた岡本らの活躍で実力通りに勝ち抜け。1勝のアドバンテージを含む4勝1敗は順当だった。

日本シリーズは2013年以来6年ぶり35回目。就任1年目の原監督は初年度からチームを再建し、同一チーム3度目の監督就任で、いずれも優勝を経験した唯一の指揮官となった。

不調でも自力でフォーム修正する千賀

両軍共に魅力たっぷりの布陣だが、今季のソフトバンクは総合力が際立った。

「主力に故障者が出て影響が出るかと思っても、バックアップで出てくる選手が大きく見劣りしない。それほどの戦力ダウンにはならない。それは投手も野手も両方です」

シーズン中、ソフトバンクを相手に戦った他球団スコアラーの一人は強さの裏側をそう証言した。

一軍の戦いを支える二軍首脳陣の意識も当然、高い。若手の育成はもちろんだが、調子を崩した主力を再生させる機能も発揮している。象徴的なのは千賀の存在だ。今季は13勝8敗の成績だったが、好不調の波が大きかった。8月17日の西武戦で3回9失点の大荒れを見せたかと思えば、9月6日のロッテ戦ではノーヒットノーランを達成。この修正能力の裏には不調から復活した過去の経験が生きている。

千賀は2018年の中盤に不調のために二軍落ち。その際、久保二軍投手コーチに意見を仰ぎ復活へのカギをつかんだ。複雑に絡んだ不調の原因をシンプルに分解し、基本の基本からフォームを再構築。これが、不調時に自力でフォーム修正する基準となっている。

久保二軍投手コーチは「どんなにいい選手でも好不調の波はある。投手の場合は相手(打者)に合わせるってことはないので、自分のフォームの原点に戻る作業が必要。困った時はここ(技術的な意味で)に戻ってくる。そういう部分を自分で掴めば、自分でフォームを修正できるようになる。去年の不調から復活した千賀は確実に何かを掴んだと思います」と証言する。

千賀だけではない。甲斐野、高橋純、高橋礼、大竹ら若手投手陣も久保イズムを吸収したメンバーだ。基礎の基礎から鍛えられた、成長途上の投手陣は巨人打線の前に立ちはだかるはずだ。ここに内川、柳田、デスパイネ、松田らを中軸とする打線が噛み合えば、ソフトバンクは強さを発揮するだろう。

巨人としては今季限りで引退する阿部慎之助捕手の花道を飾りたいところ。遊撃手として初の3割40本塁打の坂本キャプテン、2年連続30本塁打の若き4番・岡本の存在も驚異だ。故障離脱していたエース・菅野も参戦を表明しており見どころは目白押し。19日にヤフオクドームで行われる第1戦はソフトバンクが千賀、巨人が山口俊の先発で午後6時半から始まる。