ポスティングシステムで今オフ挑戦
ハマの大砲、筒香嘉智(DeNA)がポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を表明した。最大の魅力はなんと言ってもその長打力。44本塁打を放った2016年には長打率.680、OPS1.110を記録し、通算成績でもOPSは.910とスラッガーとして申し分ない数字を残している。
さらに選球眼も良く、この4年間は平均87四球を選んでおり、4割前後という非常に高い出塁率でもチームに貢献した。今季の打率.272、29本塁打、79打点をやや物足りなく感じるのもそれだけ安定した活躍を続けてきた証、ムラのない長距離砲であることはアピールポイントだ。
偉大な先輩達もOPSは下がり、四球も減少
これまでに海を渡った右投げ左打ちの外野手の移籍前年とメジャー1年目の成績を比較してみよう。
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NPBで超一流の実績を持つ選手でさえメジャーで成績を維持することは難しく、OPSで.150程度下がる傾向にある。
青木は日本時代と変わらない活躍に見えるが、移籍前年はレギュラーに定着した2年目から続けていた打率3割が6年連続で途切れたシーズン。その前年には打率.358というハイアベレージに加えOPSも一流スラッガークラスの.944を残していた。
四球数もイチローは54→30、松井は114→63、福留は76→81、青木は51→43。試合数は増えているのに4人中3人が減っている。
メジャーでは球場が7メートル広くなる
見逃されがちだが、ホームランバッターにとって球場の広さは成績に直結する重要な要素だ。DeNAの本拠地、横浜スタジアムは両翼94メートル、センター118メートルでNPBの中でも広くない。
実際、2018年シーズン終了までに行われた2497試合で通算本塁打数は4852本。本塁打の出やすさを示したパークファクターは1.25と高い。1より大きければ本塁打の出やすい球場、小さければ出にくい球場だから、これまではセ・リーグの中でも打者有利の球場を主戦場としてきたことになる。
しかし、メジャーの球場は両翼もセンターも7メートル程遠くなる。フェンスギリギリでスタンドインしていた打球が外野フライになってしまう状況にどこまで対応出来るか。
また、これまでに海を渡った選手達との違いとして筒香は守備、走塁が秀でているタイプではないだけに、打撃での貢献がより求められる。打率.280、20本塁打、OPS.800、成功したと言えるためには最低でもこれぐらいの成績を残したいところだ。
ヒントは日本と変わらぬ大谷の活躍
そのために何が必要か。実はNPBでもMLBでも同じような打棒を発揮するスラッガーがいる。大谷翔平(エンゼルス)だ。2016年に打率.322、22本塁打、67打点、OPS1.004、2017年に打率.332、8本塁打、31打点、OPS.942と打者としても好成績を収め海を渡ると、メジャー初年度も打率、285、22本塁打、61打点、OPS.925と活躍した。
移籍前年の球種別打率を見ると大谷が得意としていたのはストレートで.377、逆に苦手としていたのがフォークで.267。ボールに最も強い力を与えられるポイントはスイングした腕が伸び切ったところ、位置で言えばホームベースのやや前方になる。
しかし、このポイントを狙っていると、この付近から落ち始めるフォークを捉えることは難しい。大谷の三振数が多いのはこのためだと思われる。もしこの弱点を克服しようとポイントを近づけると、今度は長所である長打力が消えてしまう可能性が高い。大谷はメジャーでもこのスタイルを継続しつつアジャストしていったのではないだろうか。
今季の筒香はほぼ全ての変化球に対して高打率を残す反面、ストレートは.238となっている。平均球速の上がるメジャーでは厳しく思えるが、キャリアハイの2016年は.322、2015年は.342と元々得意とした。勝負どころでの1本を打つために、今季は引きつけて打つスタイルに比重を置いていたのかもしれない。
今春キャンプでは足の上げ幅を小さくしたフォームを試すなどメジャー挑戦の準備を着々と進めつつ、試合では軽打と強打を使い分けチームバッティングに徹することもあった。何年も前からメジャーに想いを馳せていただけに引き出しの数も多いはず。現状ではメジャーでの活躍は厳しいとする意見の方が強いが、ポイントを前にした打撃でメジャーの投手が投げ込む豪速球をスタンドに突き刺してほしい。