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周東佑京がいよいよ侍デビュー、育成出身「韋駄天」は世界に通用するか

2019 10/31 06:00小中翔太
周東佑京ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

プロ2年目の23歳、盗塁成功率83.3%

プレミア12(11月2日~17日)で日本の誇る「韋駄天」周東佑京(ソフトバンク)が世界デビューする。オールスター出場よりも狭き門の侍ジャパンのメンバーに、今季育成から支配下登録されたばかりのプロ2年目、打率2割に満たない23歳の控え選手がサプライズ選出されたのは、50mを5.7秒で駆け抜ける脚力を買われたからだ。

先の日本シリーズでも俊足ぶりを存分に発揮した。第1戦では7回無死二塁から代走で登場。打者・内川の送りバントは投手正面に強く転がり、並の走者なら三塁アウトのタイミングだったが、捕球したマシソンが投げることすらできないほど悠々と三塁を陥れ、チームの追加点につなげた。

東農大北海道オホーツクから2017年の育成ドラフト2位指名でプロ入りした韋駄天はルーキーイヤーの昨季、ファームで27盗塁を決めウエスタンリーグの盗塁王を獲得。盗塁成功率も87.1%と非常に高かった。

オフには稲葉篤紀監督が指揮を執ったU-23ワールドカップで日本代表の一員としてプレー、足だけでなく外野守備も評価されていた。今季3月に支配下登録を勝ち取ると主に代走や守備固めとして102試合に出場し25盗塁、成功率83.3%と結果を残した。

とはいえ、102打数20安打の打率.196、1本塁打、6打点の選手が選ばれるのは異例だ。

盗塁の重要性痛感させられた第3回WBC

侍ジャパンが盗塁の威力もダメージも痛感させられたのが2013年のWBC第3回大会だ。2次ラウンドの台湾戦では、後のない1点ビハインドの9回2死から鳥谷が2盗を成功させ、井端の同点適時打を呼んだ。失敗すれば試合終了の場面で貴重な盗塁となり、その後10回に勝ち越して勝利をつかんだ。

しかし準決勝のプエルトリコ戦では3点を追う8回に1点を返し、なお1死1、2塁という場面で痛恨の重盗失敗でチャンスを逃す。盗塁による天国と地獄を味わった。

ちなみに第1回WBCでは、13盗塁(失敗2)を決め成功率86.7%、第2回は11盗塁(失敗4)で成功率73.3%と、足を絡めた攻撃で日本は連覇を達成。準決勝で敗退した第3回は7盗塁(失敗4)で成功率63.6%だった。

盗塁の得点価値は0.17点と実はそれほど大きくない。しかし失敗してしまうと−0.40点。成功時のメリットよりも失敗時のデメリットの方が大きいため、成功率は最低でも70%以上が要求される。

周東はこの水準を大きく上回っており、1点を争う終盤での切り札になり得る。もちろん盗塁だけでなく2塁から単打での生還や3塁に到達すれば内野ゴロでもホームを狙えるなど得点パターンは確実に増える。

過去の侍ジャパンメンバーを見れば、国際試合でスタメンを張れるだけの実績、実力を持った足の速い選手はいたが、走力に特化したスペシャリストとしての選出は周東が初。貴重な代表枠を割いてまで選ばれた仕事人、推定年俸600万円の若武者が息詰まる接戦に決着をつける。