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中日・根尾、待望の1軍デビューも2打数2三振で1年目終わる

2019 10/1 11:00楊枝秀基
ようやく1軍デビューした根尾ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

9月29日阪神戦で3球三振

プロとしてのスタートは試練から始まった。中日のドラフト1位ルーキー・根尾昂が9月29日の阪神戦(甲子園)で、今年の12球団ドラ1で最も遅いプロ初出場を果たした。

出番は七回の遊撃守備だった。いきなり先頭・北條の打球を正面でさばくと、一塁への送球が本塁方向にそれるも何とかアウト。1死一、二塁の場面では木浪の二ゴロで併殺を完成させた。

プロ初打席となった八回二死一塁の場面では、ジョンソンの135キロのワンバウンドしたカーブに手を出し3球三振。微妙なハーフスイングだったが、三塁審判にスイングと判定され呆然と見送るしかなかった。

1年前に春夏連覇を果たした聖地で

安打を記録することもなく、試合にも敗れる結果となった。だが、大阪桐蔭時代の2018年に春夏連覇を果たした聖地・甲子園でプロとしての第一歩を踏み出した。

「グラウンドの中の緊張感であったり、相手投手の気迫を感じることができました。(打席では)とにかく打っていこうと思ったけど、スイングできなかった」

結果よりも、ようやく一軍での公式戦出場を果たした安堵感が表情ににじみ出ていた。

2軍で11試合連続安打

今季の2軍戦は108試合に出場して打率.210、2本塁打、33打点の成績だった。だが、9月に入って打撃の調子が急上昇。25日のウエスタン・リーグ広島戦(由宇)まで11試合連続安打を記録するなど、月間打率.355と結果を残しシーズン終盤での一軍昇格にこぎつけた。

一軍登録された27日にはマツダスタジアムで行われた広島戦に帯同。「新鮮ですね」と明るい表情を見せた。名古屋からは多くのテレビカメラや取材クルーがデビューに合わせて大挙訪問。中日関係者が「今季、取材の人の数が一番多いんじゃないですか」と笑ったほどだ。

だが、根尾はベンチスタート。九回二死無走者の場面、ネクストバッターズサークルで代打の準備をするところまではきた。それでも、前打者の木下拓が三振に倒れるとそのままベンチへ下がった。スタンドから背番号7の姿を発見し歓声を上げていたファンも肩透かしを食らった形だった。

肌で感じた鳥谷の存在感

そして9月30日の今季最終戦、根尾にとってはデビュー2戦目となった阪神戦(甲子園)でもリベンジはならなかった。七回二死一、二塁で代打に立つも岩崎の前に空振り三振。勝ちパターンで投げてくる防御率1.01の左腕のカベは高かった。「チャンスだったので何とかしたいと思ったんですけど…」と悔しさを噛み殺したが、根尾に甲子園の女神は微笑んではくれなかった。

ただ、特別な体験をできたことは収穫だった。三振の直後、七回裏から遊撃守備につくと、先頭で打席に入ってきたのは代打・鳥谷。虎のレジェンドと同じ空気を吸った。攻守交代では同じ遊撃に入ってきた鳥谷への大歓声にも驚いた。

「すごい歓声だった。鳥谷さんと同じグラウンドに立っているんだなと実感しました。今後の野球人生の財産になると思います」と、テレビで見るだけだったスターの存在感に痺れた。

根尾のプロ一年目は2試合とも代打出場で2打数無安打2三振。現在の自らの立ち位置を、否応なく知らされたはずだ。

「1軍の舞台で打てるようにならないと」。まだまだ先は長い。根尾のプロ人生は始まったばかりだ。