94人がプロ入りも今季現役は8人
1980年4月2日~1981年4月1日に生まれ、プロ入りしたいわゆる“松坂世代”の選手は合計94人。時の流れとともに多くがユニフォームを脱ぎ、今季は館山昌平(ヤクルト)、永川勝浩(広島)、實松一成(日本ハム)が引退を表明した。
今季開幕時点でNPBで現役だったのは、先に名前を挙げた3人のほか、世代のトップランナーである松坂大輔(中日)を筆頭に、藤川球児(阪神)、和田毅(ソフトバンク)、久保裕也、渡辺直人(以上、楽天)の計8人。この中で来季も現役が濃厚なのは、夏場に守護神に復帰して15セーブをあげている藤川。そして久保と渡辺の楽天コンビも、来季の契約の提示がありそうだ。
久保は2017年に楽天に移籍後は中継ぎとして重用され、今季も22試合に登板。渡辺は6月に右足首の脱臼で登録を抹消され、今季は19試合の出場にとどまったが、看板選手のひとりであり、チーム内で人望は厚い。
世代のトップランナー、松坂の来季は?
先行きが不透明なのは、ともにNPB通算100勝以上をマークしている松坂と和田。一部報道では現役続行を希望する松坂に対し、中日は今季年俸8000万円から大幅減で来季契約を打診しているという。
和田は2016年に古巣のソフトバンクに復帰し、同年にリーグ最多の15勝に最高勝率のタイトルも獲得した。しかし翌年、左ひじにメスを入れて以降は成績が下降線をたどり、昨年は左肩痛の影響で1軍登板なし。今季も12試合登板の4勝にとどまり、単年契約とあって去就が微妙な立場にある。
ちなみに1998年のセンバツで関大一高を準優勝に導いた久保康友は、2017年にDeNAを退団し、昨年はアメリカ独立リーグ、今季はメキシカンリーグでプレーした。現役続行ならNPB復帰の可能性は残るが、40歳になるベテランを日本の球団が獲得するとは考え辛い。
松坂世代のコストパフォーマンスを独自に算出
松坂世代でプロ入りした選手のなかには、活躍できずに去った者ももちろんいるが、多くの選手がプロ野球界で一定の存在感を示した。その中から投手に絞り、松坂世代で最もコストパフォーマンスが高かった選手は誰なのかを検証してみよう。
コストパフォーマンスを算出するにあたり、独自の計算基準で選手の貢献ポイントを出した。貢献ポイントは「登板数(先発は1、救援は0.3)+勝利+セーブ(1S=0.5P)+ホールド(1H=0.5P)」の合計。対象となるのは1軍で300試合以上に登板した投手で、成績と年俸合計はNPB在籍時のものに限定する。
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特例として松坂は世代の顔であり、MLB通算158登板していることを考慮。和田はMLBでの21登板を加えても300登板には満たないが、世代で杉内俊哉に次ぐ130勝の実績に敬意を表して、今季で引退する館山は惜別の意味を込めて、リストに加えた。
最も単価が低かったのは長田秀一郎、現役では久保裕也
単純に1貢献ポイントあたりの単価が低かったのは、長田秀一郎だった。長田は2002年のドラフト自由枠で、慶応義塾大から西武に入団。1年目に先発で4試合に登板したが、それ以降はすべてリリーフで起用され続けた。
2013年途中にDeNAに移籍してからも、仕事場は救援のマウンド。派手な数字は残していないが、現役15年間で1軍登板がなかった年はなく、20試合以上に登板したのが8シーズンと、細く長く活躍した好投手だった。
最高年俸は引退年の4500万円。現役生活で最も多い56試合に登板した2010年の年俸はなんと1200万円と、コスパの観点から言えば、球団にとってありがたい選手だっただろう。
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2003、2005年と阪神の2度の優勝を経験した久保田智之と江草仁貴も、こうして見るとコスパが高かった印象だ。2003年はともに入団1年目で、久保田は26登板10先発で5勝。江草は1試合のみの救援登板だったが、2005年の両者は虎のブルペンを支える存在になった。
久保田は鉄壁リリーフ陣「JFK」の一角として守護神を務め、5勝27セーブの働きぶり。江草はロングリリーフもこなせる中継ぎ左腕としてベンチに重宝され、すべて救援で51登板を記録した。2005年の優勝に大いに貢献したにも関わらず、ふたりともキャリアを通じては1貢献ポイントあたり200万円台と高コスパの選手だった。
現役では久保裕也が高コスパ。一度はDeNAを戦力外になった右腕は、楽天で中継ぎとして重宝され、今年9月に通算500試合登板を達成した。派手さはなくとも「細く長く」の好例だろう。
松坂、和田、杉内、藤川のコスパは?
では、NPBだけで20億円以上稼いだ大物4人はどうだろうか。まず先発として活躍してきた松坂、和田、杉内俊哉は、いずれも1貢献ポイントあたり700万円を越える結果になった。救援投手は貢献度が数字に表れにくく評価基準が難しいとされ、年俸が大きく上がり辛い傾向にあるが、先発は勝ち星という数字が明確に表れ、その数字が増えるごとに年俸も上がりやすい。
最多勝のタイトルを松坂は3回(1999~2001年)、和田は2回(2010年、2016年)、杉内は1回(2005年)獲得。年俸は右肩上がりに増え、3億円を超えたところで松坂と和田はMLBに、杉内は巨人にFA移籍する。松坂はMLBでのプレーを経て、2015年に年俸4億円の3年契約でソフトバンクに入団。和田は2016年に、松坂と同条件で古巣ソフトバンクに復帰を果たす。杉内はFA移籍初年度の2012年こそ規約で年俸は3億5000万円に据え置かれたが、翌年からは5億円に跳ね上がった。
しかし彼らが日本復帰、あるいはFA移籍したタイミングは現役生活が終盤に差し掛かった頃。全盛期より力が衰えたことは否めず、ケガで登板がなかったシーズンもあった。高額年俸を得ながら実績が残せないと、必然的にコスパは悪くなってしまう。
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とはいえ、彼ら3人は数多くの実績を残した。最多勝以外にも、松坂は最優秀防御率を2回、最多奪三振を4回、杉内は最優秀防御率1回に最多奪三振、最高勝率がともに3回、和田は最高勝率を1回手にしている。
松坂世代の選手がいかに傑物揃いであったかを証明する実績を残したことに、敬意を払わねばならない。さらに観客動員力やグッズ販売等への影響力も考えると、球団にもたらす利益は成績面以外でも小さくないことも付け加えておく。
大物4人で唯一のクローザーである藤川のコスパは悪くない。NPB通算16年で764登板、240セーブはもちろん松坂世代の選手で最多。今夏にクローザーに復帰して15セーブを積み重ね、日米通算250セーブまであと8に迫っており、松坂世代では最も名球会に近い。
NPBでの最高年俸は、2009年からの年俸4億円の4年契約。1貢献ポイントあたりは約576万円になるが、残した実績と年俸のバランスを考えると、金額以上に球団への貢献度は高いと感じる。
※成績は9月27日現在、金額はいずれも推定