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CS出場を逃したロッテ 収穫は種市ら若手投手陣と安田のファーム2冠

2019 9/26 17:00浜田哲男
進境著しい安田尚憲ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

上位チームとの差は歴然

3年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)出場をかけて最後まで戦い抜いたロッテ。それでもシーズン最終戦となる9月24日の西武戦に敗れて力尽きた。あと一歩だった。9月23日の日本ハム戦で勝利した時点で3位の楽天とはわずか0.5ゲーム差。自力でのCS進出は既に絶たれていたが、楽天のその後の勝敗次第でCS進出の可能性は残されていた。

数字だけを見れば惜しいと言えるかもしれないが、西武やソフトバンクといった上位チームとの差は歴然だった。走攻守全ての面でまだまだ大きな差があるし、昨季よりは厚くなったと言われる選手層も上位チームと比べれば薄い。ここぞという場面での打撃の勝負弱さ、守備のもろさも露呈した。

ここ数年にわたってカモにされていたソフトバンクには17勝8敗と大きく勝ち越したものの、西武やオリックスにカモにされた。特にビジターでは滅法弱く、メットライフドームでは2勝8敗、京セラドーム大阪では3勝10敗と大きく負け越した。やはり2つのチームにこれだけやられると、貯金を増やしていくことは難しい。

影を潜めた機動力野球

課題は様々あるが、昨季見せた機動力野球が今季は影を潜めた。昨季就任1年目だった井口資仁監督は走塁革命を掲げ、「チャレンジして失敗したならかまわない」と積極的な走塁を促した。その成果としてリーグ2位の124個の盗塁をマークしたが、今季は75個に激減。昨季39個の盗塁を決めた中村奨吾はマークが厳しくなったこともあり12個に減少した。

今季はホームランラグーンが設置されて球場が狭くなったこともあり、日本で実績のあるレアードや飛ばし屋のバルガスらを獲得。レアードはシーズン終盤に失速したものの序盤は打率3割を超えるハイアベレージを残し、ハイペースで本塁打を量産するなど首脳陣やファンの期待に応えた。また、鈴木大地が15本、中村が17本とそれぞれキャリアハイをマークするなど個々の本塁打数が増加した。

結果、昨季78本だった本塁打は158本と倍増し、得点も昨季の534点(リーグ5位)から642点(リーグ2位)と大幅に増加。長打率も昨季の.355(リーグワースト)から今季は.402(リーグ3位)に向上した。

しかし、昨季浸透しつつあった走る野球を、今季も引き継ぎ、そして上積みしていくことができなかったのは残念だ。打線は水物。打てなくても泥臭く1点をもぎ取っていく意識が高ければ、試合の流れを変え、勝ち星を拾える可能性も出てくる。長打力の維持・向上は来季も課題ではあるが、上位を狙うためには再び走塁意識をチーム全体で高める必要があるだろう。

シーズンを通してエース不在

強いチームには必ずと言っていいほど絶対的なエースがいる。今季の場合、西武であればニール、ソフトバンクであれば千賀滉大、巨人であれば山口俊といったように、シーズンを通してコンスタントに勝ち星を挙げて貯金を作り、ここ一番で頼れるエースが必要不可欠だ。

開幕前、ロッテのエース候補は開幕投手を務めた石川歩、昨季に最高勝率のタイトルを獲得したボルシンガー、実績のある涌井秀章らと目されていたが、シーズン序盤から3投手が軒並不振だったことが最後まで響いた。

石川は終盤に持ち直し本来の投球を見せて8勝(5敗)を挙げたが、それでも石川の能力からすれば物足りない。涌井にいたっては長い期間2軍での調整を強いられるなど、わずか3勝(7敗)に終わった。また、昨季後半から各チームの打者にアジャストされ始め、今季は昨季通りの活躍は難しいのではと予想されていたボルシンガーも4勝(6敗)に終わった。涌井とボルシンガーでわずか7勝(13敗)では上位を狙えるはずもない。

未来のエース候補が躍動

それでも、来季へ向けて明るい材料となるような点も見られた。その最たる存在が、昨季までプロ未勝利ながら今季8勝(2敗)を挙げた種市篤暉だ。150km超の伸びのある直球と落差のあるフォーク、効果的に織り交ぜる鋭いスライダーを武器とし、来季以降のエース候補に名乗りを挙げた。今季は135奪三振をマークしており、ここぞの場面で三振を取れるのも大きい。

井口監督や吉井理人投手コーチも、種市は今後のロッテを背負っていく投手としてピンチの場面でもあえて変えず、徐々に長い回を投げさせるなどタスクを課していた。そして、結果としてそれに見事応えた種市が来季のエース候補の一番手であることは間違いない。

ほかにも、今季5勝を挙げてブレイクの兆しを見せた岩下大輝、シーズン終盤に来季以降の活躍をにおわせる投球を続けていたルーキーの小島和哉など、若手先発陣が今季様々な経験ができたことは大きい。

野手では、2年目の安田尚憲がイースタン・リーグで本塁打と打点の2冠王に向けて突き進んでおり、来季は1軍での活躍が期待される。強いチームになるための条件として競争力は重要な要素だ。今季はどのポジションも多少の入れ替えはありながらも、ほぼメンバーは固定されていた。

それはそれで悪いことでは決してないが、やはり競争がなければ切磋琢磨できないし、チャンスをある程度与えなければポジションを奪おうと意気込む選手のモチベーションも上がらない。現在のレギュラーに危機意識を持たせるぐらいの下からの突き上げを期待したい。

来季は井口政権としての集大成にもなりうる3年目。あと一歩でCS出場を逃した無念、目の前で西武の胴上げを見せつけられた悔しさを糧に、ロッテがどう生まれ変わるのか注目だ。