ダイビングキャッチで有終の美
ロッテ一筋26年。千葉を愛し、千葉に愛された正真正銘のフランチャイズプレーヤーであるロッテの福浦和也が9月23日、引退試合となった日本ハム戦に7番・DHで先発出場。駆けつけた多くのファンは2001本目の安打を期待したが、結果は4打数無安打。それでも、9回に長年守り続けた一塁の守備につくと、平沼翔太の放ったライナーを華麗な横っ飛びで好捕し、有終の美を飾った。
誰がこんな結末を予想しただろう。ロッテが6-1とリードして迎えた9回表、福浦がDHを解除され一塁の守備位置につくと、スタンドからは割れんばかりの歓声。福浦の一挙手一投足に多くのファンの目が釘付けになった。9回表からマウンドに上がった益田直也が牽制球を投げ福浦がキャッチすると、それだけでライトスランドはどよめいていた。
「幕張の安打製造機」と称された、鮮やかなバットコントロールから繰り出されるヒットをもう1回見たいというファンの願いは叶わなかったが、それでも最後にドラマティックな結末が待っていた。平沼の放ったライナーが、ダイビングを試みた福浦のグラブに吸い込まれるようにおさまったのだ。9回2死、最後の最後でまるで野球の神様が用意してくれたかのような結末に、スタンドは感動と興奮の渦に包まれた。
守備の名手そのもの
打撃職人としてのイメージが強い福浦だが、ゴールデングラブ賞も三度受賞。一塁の守備で見せる巧みなグラブさばきとキャッチングには定評があり、守備でも多大な貢献をしてきた。
引退セレモニーで登場したかつてのチームメイト、楽天の今江年晶が「ファーストで僕の変な送球をどれだけ簡単に取ってくれたか」と語れば、BCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスに所属する西岡剛は、「若くしてショートで試合に出させてもらった時、自分自身すごく送球に自信がありませんでしたが、難しいショートバウンドやハーフバウンドを簡単にすくい上げて取っていただき、すごく助けてもらった」と、福浦の一塁守備に幾度となく救われたことを語っていた。
そんな福浦のところに最後に打球が飛んでいき、ファインプレーで試合が終わる。まさに名手・福浦そのものだった。華麗なヒットが見られなかったことはもちろん残念だが、このプレーにはそれと同等かそれ以上の価値があったように思う。
人柄が凝縮されたメッセージ
福浦からの最後のメッセージは、球団をはじめ、スタッフ、監督、コーチ、選手、裏方、ファンなど、これまでに関わった多くの人々に対する感謝の気持ちがあふれていた。
特に「1、2軍マネジャー、広報、スタッフの皆様、たくさんのサポートをしていただきました。1、2軍用具担当、裏方さん、たくさんのサポートをしていただき、毎日の練習をサポートしていただきました。そして1、2軍のトレーナーの先生方、毎日体のサポートをしていただきました。皆さんの支えがあり、ここまでやって来られた野球人生でした」という言葉には、常に感謝の気持ちを忘れないという福浦の人柄が凝縮されていた。
福浦が外野を一周してファンに挨拶をする際、ライトスタンドからは大量の紙吹雪が舞い、千葉のレジェンドとの別れを惜しむファン達からの大音量の福浦コールが鳴り止まなかった。そして多くのファンが、人目をはばからずに号泣した。
福浦は最後に「自分のかなえられなかったリーグ優勝、そして井口監督の胴上げ。ここにいる1軍選手、そして2軍で必死に頑張っている選手達が必ず叶えてくれると思います」と自身の夢を託した。福浦の引退を起点に、ロッテが今後どう戦い、どう生まれ変わっていくのか期待したい。