ファンからも絶大な信頼
昨季に引き続き、今季も圧倒的な攻撃力でパ・リーグ制覇を成し遂げた西武。チーム打率.265と756得点はリーグトップだ。
一方でチーム防御率.4.35はリーグワーストで、昨季に引き続き投手力の向上という課題は今季も解消されていない。それでも西武が連覇を達成したのは、一人で11の貯金を作り、安定感抜群の投球を見せたニールの存在が大きい。
今季の成績は17試合で12勝(1敗)。本拠地メットライフドームで行われた9月18日のオリックス戦では8回を無失点に抑える快投を見せ、NPB1年目ながら10連勝。9月24日のロッテ戦も先発し球団のシーズン最多連勝記録を更新するだけでなく、昨年のボルシンガー(ロッテ)らと肩を並べる外国人投手の連勝記録に並んだ。
まさに救世主ともいえる活躍に対して、SNSにはファンから「どのチームが対戦相手でも、これ勝ったわって確信できる投手なんてなかなかいない」「頼むから日本にいる間はライオンズで。メジャーに戻りたいなら仕方ないけど…」「ニールが登板した時の安心感は半端じゃない」など、絶大な信頼が寄せられている。
なぜニールはこれだけ勝ち続けることができるのだろうか。
ツーシーム中心の投球でゴロの山を築く
ニールの最高球速は148km。決して剛速球で打者をねじふせるタイプでもなければ、次々に三振を奪っていくタイプでもない。抜群の制球力でバットの芯を外し、ゴロの山を築いていく打たせて取るピッチングが持ち味だ。
直近3試合の登板内容を振り返ると、最も三振を奪った試合は9月18日のオリックス戦の5個(今季最多は7個)、1試合平均7回を投げているが三振は平均3.7個となっている。また、与四球は0で、球数も投球6回101球、8回96球、7回83球といった具合に少ない。シーズントータルでみても投球回100回1/3で与四死球はわずか21個と、いかに制球力に優れ、打たせて取る省エネのピッチングで打者を封じ込めているかがわかる。
前述した18日のオリックス戦では、内外角に140km台のツーシーム(本人はシンカーと呼ぶ。ここではSPAIA一球速報に合わせてツーシーム)とチェンジアップ、カットボールを投げ分けて打者を翻弄。24個奪ったアウトのうち、17個をゴロアウトにしとめる“らしい”投球内容だった。
投球の生命線は、全球種における割合が約53%と半分以上を占めるツーシームだ。空振率は約4%と高くなく三振を奪うという感じのツーシームではないが、このツーシームを多投してゴロの山を築く。また、約26%を占めるチェンジアップの切れ味も抜群。落差があり、こちらは空振率が約16%。その他、カットボールやスライダーも時折織り交ぜる緩急自在の投球で打者を幻惑する。ちなみに直球の割合は5%を下回る。常に打者の手元で球を動かすことで、バットの芯を外していく。
左右打者別の成績をみると、対右打者の被打率が.294、対左打者の被打率は.245。内角から外角へ逃げていくツーシームがいかに機能しているかがわかる。
強固な内野守備が後押し
ゴロアウトを重ねていくニールのような投球スタイルにとって、バックに固い守備陣が控えていることも功を奏している。18日のオリックス戦で勝利を挙げたニールは、お立ち台で「源田、外崎たまらん!」と二遊間コンビの守備を称賛した。
捕手の森友哉が構えた位置に制球し球数も少ないため、源田や外崎も守りやすく打球の方向も読みやすいはずだ。森の配球面でのさらなる成長にも好影響を与えているように思える。また、勝ち続けており結果も伴っているため、投げる側と守る側の信頼関係もどんどん深まっているだろう。
当然、勝ちが続いているのは強力打線による援護も大きい。しかし、打たせて取るニールのピッチングと西武の強みでもある二遊間の守備がかみ合っていることが、勝てる大きな要因ではないだろうか。
いまや先発の大黒柱として君臨するニール。クライマックスシリーズや日本シリーズといった短期決戦では、シーズン以上に絶対的なエースの存在が勝負を大きく左右する。ニールの存在の大きさは、今後の戦いでより一層際立つはずだ。