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ヤクルト廣岡大志がついに覚醒か? 先輩たちの高卒4年目と比較

2019 9/20 06:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズの廣岡大志ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

廣岡大志が9月に入り覚醒

毎年のように期待されながら、ここまでは大きな実績を残せず苦しんでいた廣岡大志(ヤクルト)が目覚めつつある。9月15日の広島戦で自身初めてとなる1試合2本塁打を放つと、翌16日の同じく広島戦でもアーチを描いた。これで今シーズン9号となり、節目の10本塁打まであと1本に迫った。

今シーズンの廣岡は開幕から苦しんだ。野手のワーストタイ記録となる開幕から41打席連続無安打と不名誉な記録に肩を並べてしまう。しかし9月に入ってからは、9試合(9月19日終了時点、以下同)の出場と少ないながらも、打率.434(23打数10安打)、3本塁打、7打点とこれまでの鬱憤を晴らすかのように打ちまくっている。 この廣岡は今シーズンが高卒4年目のシーズンとなる。チームの先輩たちは高卒4年目のシーズンに2桁本塁打を達成していたのだろうか。少し振り返ってみたい。

畠山和洋、川端慎吾、雄平の高卒4年目は0本塁打

ヤクルトの現役選手で2桁本塁打経験者かつ高卒4年目以上の選手は4人いる。山田哲人川端慎吾雄平、そして先日今シーズン限りの現役引退を発表した畠山和洋である。成長著しい村上宗隆は今年が高卒2年目ということもあり、この中にはまだ含まれない。ある意味、規格外ということだ。 2015年のリーグ優勝にも大きく貢献した4人の高卒4年目の成績は下記の通り。

現役2桁本塁打経験者の高卒4年目成績

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山田哲人の4年目といえば、全143試合に出場し大ブレイクを果たした年だ。今や代名詞にもなった「トリプルスリー」(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)こそ達成できなかったが、日本人による右打者最多安打を更新する193安打を放っている。従来の記録である藤村富美男(阪神/1950年)の191安打を超える192安打目は、満塁本塁打で決めたことでも話題になった。

11年後に打点王を獲得することになる畠山はわずか4試合の出場でわずか1安打。本塁打は1本もない。

打者のタイプは違うが、同じく11年後に首位打者となる川端慎吾も4年目は故障もあり、一軍で30試合の出場に留まっている。打率.270(37打数10安打)と安打製造機の片鱗はみせているが、本塁打と打点はともに「0」だった。

リーグ優勝を決めるサヨナラ打を放った雄平は野手に転向する前の話だが、36試合に出場して1打席のみ。ちなみに投手としては2勝1敗5ホールド、防御率6.51と苦しんでいた。

廣岡は先輩たちと比べて高卒4年目の時点では、結果を残していると見ていいだろう。出場試合数も川端、畠山に比べるとかなり多い。期待値が高すぎるゆえに物足りなさを感じるかもしれないが、現時点では十分な成績を残しているのである。

逆方向への本塁打が多い廣岡

今シーズンの本塁打の内訳を見ると、右方向が5本、中堅方向と左方向がそれぞれ2本となっている。右打者の廣岡にとっては、逆方向となる右方向への本塁打が55.6%で最も多いのだ。

同じ右打者で見ると山田哲は右方向が5本、中堅方向が8本、左方向が21本。全本塁打の61.8%が左方向であり、右方向は14.7%しかない。サンプル数は少ないものの廣岡の右方向への本塁打の多さがわかるだろう。

逆方向へ強い打球を打てるのは、強打者の武器となる。ゆくゆくは30本塁打も期待できそうな打者であることは間違いない。とはいえ、打率1割台ではレギュラーを奪うことはむずかしい。やはり確実性を上げることが課題となってくる。

昨シーズンと比べるとボールの見極めは格段に良くなった。BB%(打席数に対する四球の割合)は4.0%(4四球/125打席)から14.0%(31四球/222打席)へと大きく上昇していることからもそれはよくわかる。次はコンタクトする力を上げていくことが求められる。

今シーズンのヤクルトは、クライマックスシリーズに出場することができなかった。選手や首脳陣はもちろんだが、多くのファンにとって苦しいシーズンだったことは間違いない。しかし残り試合が、廣岡が来シーズンにジャンプするためのホップ・ステップとなれば、ファンはきっと救われる。

※数字は2019年9月19日終了時点