小川監督、宮本ヘッドコーチの退任を発表
ヤクルトは9月7日の巨人戦で敗れ、クライマックスシリーズ(CS)出場の目が完全になくなった。それに伴い、辞任を表明していた小川淳司監督とともに、次期監督候補としても度々名前の挙がっていた宮本慎也ヘッドコーチも退任が発表された。
今シーズンのヤクルトは序盤こそ好調だったが、徐々に失速。5月30日に最下位へ転落すると、そこから見せ場を作れなかった。その責任を取っての苦渋の決断だ。
幾度も大型連敗があり苦しかった今シーズン。小川監督は見るからにやせ細りながらも、最後まで指揮を執る姿を見せた。温かいファンが多く厳しい罵声が飛ぶのはまれな神宮球場でもヤジが飛んだほどだ。いつも優しそうな表情ではあるが、苦しかったことは想像に難くない。それでも球場入りの際はファンからの声援に手を振って応えていた。
PL学園出身という経歴や現役時代のストイックさもあり、お目付け役のような印象を受ける宮本コーチ。失策があるたびにカメラで映される渋い顔を見れば、それも納得ではある。しかし、球場に入るときは意外にも優しそうな表情を見せる。スタンドの子どもたちから声がかかれば、必ずと言っていいほど反応。そのときは鬼コーチの表情など微塵もない。
そんな2人のユニフォーム姿を見るのは残り数試合しかないのである。
畠山和洋、館山昌平のベテラン2人が現役引退
悲しい報道は首脳陣だけにとどまらなかった。
追い打ちをかけるかのように、これまで生え抜きとしてチームを支えてきた、畠山和洋内野手と館山昌平投手が現役引退を発表した。晩年は故障に泣いた2人。多くのファンが一軍への復帰を心待ちにしていたが、思いはかなわなかった。次に一軍で、その勇姿を見るのは引退試合の場になりそうだ。
他の多くの球団が優勝、CS出場争いをするなか、ヤクルトには少しだけ早い秋風が吹いている。別れ、にしては少し暖かい。
今シーズンは2年前の96敗ほどではないにせよ、130試合終了時点で52勝76敗2分(勝率.406)とたくさん負けた。神宮球場では63試合で25勝36敗2分(勝率.410)と本当によく負けた。優勝争いやCS争いからは早々に脱落した。結果を見れば、このような報道が出るのは致し方ないかもしれない。
しかし、裏を返すと来シーズンへの準備を早くできるということである。もちろん、タンパリングとなってしまうため、現時点では他球団の選手に直接声をかけられない。しかし、すでに福田秀平(ソフトバンク)を調査する報道がされているように、準備は進められる。
また、相手チームが順位争いをしているため、あからさまには難しいだろうが、これからの残りシーズンを若手中心で戦っていくことも考えられる。二軍ではルーキーの中山翔太や濱田太貴といった、未来を担う有望株たちが昇格を心待ちにしているのだ。ポジティブに捉えるなら来季へ向け一歩先に進めるのである。
プロ野球の世界は入れ替わりが激しい世界。「ファミリー球団」と言われるヤクルトだってそれは同じ。誰かが去って誰かが入ってくる。その繰り返しである。
誰かが去る悲しみを、誰かが入ってくる喜びや期待で相殺できればどんなに楽か。悲しいかな人間の感情はそんなに都合良くできていないらしい。であるならば、最後は笑顔で楽しみ、感謝の気持ちを持って送り出したい。
悲しみに感謝、そして期待の入り交じる秋の夜長を神宮球場で感じられるのは4試合だけ。もうすぐシーズンは終わる。
※数字は2019年9月8日終了時点