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「増田で打たれたら仕方ない」 安定感抜群の投球を続ける西武・増田達至は何が変わったのか

2019 9/10 06:00浜田哲男
埼玉西武ライオンズの増田達至ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ファンも納得の活躍

現在、首位のソフトバンクと1ゲーム差で2位につけている西武。チーム打率.266、得点数695はリーグダントツという圧倒的な破壊力をもつ一方で、チーム防御率4.45、失点数643はともにリーグ最下位。そんな不安を抱えた投手陣の中、ここまで抜群の安定感を維持し、チームの好成績に貢献しているのがクローザーの増田達至だ。

2016年にセットアッパーからクローザーに転向し、2017年まで2年連続で28セーブを挙げる活躍。選手会長に就任してさらなる飛躍が期待された昨季は、不振で再びセットアッパーに配置転換。7月には2軍落ちも経験した。登板数はプロ入り後最少となる41試合にとどまり、防御率5.17、被打率.284と精彩を欠くシーズンとなった。

しかし今季は、防御率1.56と安定し、被打率も.199。現在リーグ3位タイの26セーブを挙げており、自己最多の28セーブの更新も射程圏内だ。何よりも今季の増田は、マウンド上での表情が自信に満ちあふれている。自身のピッチングに手応えを感じているのだろう。

SNS上でも、「増田でダメなら仕方ない。今シーズンの増田はそういうレベルにある」「失敗することもあるが、増田が打たれたなら致し方ないぐらいの気持ち」というファンの声が寄せられている。

それでは、今季の増田は一体何が変わったのだろうか。

直球の威力が向上し、フォークボールが機能

増田といえば、生命線は直球。昨季は投球数の約73%が直球だったが、今季も約69%と引き続き直球主体の投球は変わらない。しかし、その直球の内容が昨季と今季では大きく異なる。

昨季の直球の被打率は.280、空振り率は7.71%だったが、今季の被打率は.197、空振り率は14.60%と数値が大幅に向上。今季は71個の三振を奪っているが、そのうちの53個が直球で奪ったものだ。昨季と比較して明らかに直球の威力が増し、最高球速も今季は156km(昨季は153km)と向上。ウイニングショットとしても機能している。

9月6日の楽天戦では、1点リードで迎えた9回裏でマウンドに上がった増田。危なげなく2アウトを奪うと、続く茂木栄五郎も伸びのある直球で空振り三振にしとめた。自信をもって投げ込む姿と地を這うような直球は、守護神と呼ぶに相応しいものだった。

また、昨季と大きく異なるもう一つの要素がフォークボールだ。昨季中盤から投げ始めて感触をつかんでいたというが、今季はフォークボールが本格的に機能。昨季の同球種の割合は約2%だったが、今季は約8%と増加。被打率も昨季の.400から今季は.174と大きく改善している。

フォークボールを織り交ぜた配球が功を奏し、直球も活きるようになってきた。ちなみに、約18%の割合を占めるスライダーの被打率も、昨季の.263から今季.222と改善している。

走者を出すシーンも散見されるが、今季の増田はどっしりと構えておりどこか余裕を感じる。制球を大きく乱していくようなこともほとんどない。今季の増田の投球は、ファンも安心してみていられるものではないだろうか。

続く無失点、真の守護神へ

増田は現在8月8日の楽天戦で1失点して以来、12試合連続で無失点を継続中。四球も同日の試合で1つ与えて以来、12試合連続で無四球と安定感が抜群だ。安打で出塁を許すことはあるが、無駄な四球を与えていないことが連続無失点を継続できている大きな要因といえる。

これまでのような投球が続けば、首脳陣やファンの増田に対する信頼も確固たるものになるだろう。2年連続となるリーグ優勝、そして昨季は悔し涙をのんだクライマックスシリーズでリベンジを果たすには、守護神・増田の存在は決して欠かすことができない。

※数字は2019年9月8日終了時点