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5年ぶりの優勝へ 今年の巨人は何が変わったのか

2019 9/5 06:00本松俊之
巨人の原辰徳監督ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

かつては圧倒的な打力と投手陣で勝ってきた

2019年の巨人は、序盤戦は首位を快走したものの失速。しかし、なんとか上位に踏みとどまり、交流戦でまさかの不振にあえいだ広島から首位を奪回した。

原辰徳監督は06年から10年間勤めた自身2度目の監督時代、07年から09年、12年から14年と2度の3連覇で6度セ・リーグ優勝を果たしているが、その間の巨人には明確な特徴がある。

それは14年を除くと、いずれも本塁打の数がリーグトップ。また、チームの防御率も08年、13年を除くとリーグトップ。つまり、圧倒的な打力と強力な投手陣でペナントを勝ち取ってきたのだ。

今年はここまで本塁打1位はいいが、防御率は3位で優勝条件を満たしていないととれる。

表1_巨人年度別成績(2006年から2019年)ⒸSPAIA

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そして何より特徴的なのは、的確な補強と選手の配置だろう。 原監督が復帰した06年に4位に終わった巨人は、FAとなった日本ハムの主砲・小笠原道大やトレードで谷佳知(オリックス)を獲得し打線の底上げを図った。また、絶対的なクローザーを欠いていたことから、上原浩治を抑えに抜擢。翌年にペナントを奪回した。

また、10年、11年といずれも3位で優勝を逃した際は、10年のドラフトで澤村拓一(中央大学)を獲得。12年にはソフトバンクからFA移籍の杉内俊哉、元フィリーズのマシソンらを獲得し投手陣を充実させ、さらに打線ではFAとなったDeNAの村田修一が加入した。それらの補強でチームは強化され、その後の3連覇につながった。

表2_年度別主な戦力(2006年から2019年)ⒸSPAIA

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3年連続のV逸で高橋監督が退任、3度目の登板となった原監督だが、巨人は今度もまた補強に走った。目玉はなんと言っても3連覇中の広島を牽引してきた丸佳浩の獲得だろう。FA移籍で加わった丸はチームに溶け込み、十分に期待に応える活躍をしている。そして西武から同じくFA移籍した炭谷銀仁朗は捕手陣に刺激を与えている。

ただしその他の補強は必ずしもうまくいっているとは言えない。元マリナーズの岩隈久志はまだ2軍でやっと実戦登板ができた段階。打線でもオリックスを自由契約となった中島宏之は期待通りの活躍ができていない。

若手の成長と生え抜き主力の活躍

外部からの補強がいまひとつではあるものの、今までの巨人と大きく違うのは、若手の成長と生え抜きの選手たちの活躍だろう。

これまでの巨人は、豊富な資金量を背景に他球団の中心選手を獲得し、チーム強化につなげてきた。小笠原や杉内、谷、村田以外にも08年には現DeNA監督のラミレスが自由契約となったヤクルトから入団し連覇に貢献。

この年からは横浜ベイスターズ(現DeNA)を自由契約となったクルーンも獲得、抑えの切り札として活躍した。 こうしたお金にものをいわせ欲しい選手を獲得する姿勢が、一部の野球ファンからは批判もされたが、今の巨人はそれだけではない。

5年目の岡本和真は昨年、33本塁打、100打点でブレークしたが、今年は苦しみながらも4番に座り巨人の顔となってきた。

捕手の大城卓三は2年目だが、レギュラーの座を小林誠司、炭谷と争っている。 そのほかにも2年目の内野手・若林晃弘、4年目の外野手・重信慎之介などフレッシュな名前がスコアボードに並ぶ。

また、投手陣では、4年目の桜井俊貴がすでに8勝を挙げ、ローテーションの一角に食い込んだ。ドラフト1位の新人、髙橋優貴も5月6日、DeNA戦での3勝目からなかなか勝ち星がつかなかったが、8月に2勝し首脳陣からの信頼も厚い。

06年から今まで、20セーブをあげた投手がいない年の優勝はない巨人だが、どんな場面でもベンチが任せられる「ポリバレント・クローザー」として頭角を現したのが4年目の中川皓太だ。

「ポリバレント」とはサッカー用語で1試合の中でポジションを変化させ、対応できる選手を意味する。 中川は今季はすでに16Sを挙げているが、ホールドも14。チームの危機にはどんな場面でもマウンドに駆けつける中川は今までのクローザー像を変え、ジンクスを打ち破るかもしれない。

また、若手だけでなく、生え抜きの主力も元気だ。 13年目のシーズンとなった坂本勇人は、ホームラン、打点のタイトルを狙える位置にいて、3割30本100打点も可能だ。まさに日本を代表する選手となったといって良いだろう。

また、15年目の亀井善行も、勝負強い打撃でチームに欠かせない存在となっているし、19年目のシーズンとなった阿部慎之助も相変わらず他球団からは脅威の存在だ。

若手やベテランの生え抜きと、外からの血がうまく刺激しあって戦う今年の巨人は、今までにないスタイルで優勝を目指す形となりそうだ。

※文中の数字は2019年9月3日時点