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西武とオリックスの"死球乱闘" 陰で耐える楽天・島内

2019 8/18 06:00SPAIA編集部
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同情を禁じ得ないオリックスの“最多被死球”

第101回全国高校野球選手権大会の2回戦で花咲徳栄の菅原謙伸が左腕に投球を受けた際に「すみません」と謝り、死球ではないことを自己申告したことが、フェアプレーの鑑であると話題になった。

1点を追う場面で、勝利に固執することなく、埼玉県の代表として全国に来ているのだから正々堂々としなければならない、という気概がとっさに言動に表れるとは尊敬の念を抱かざるをえない。

実際、百数十キロの硬式球が当たれば、痛みどころか打ち身や骨折、当たり所によっては重大な事故につながる可能性すらある。そのため、プロの試合でも死球が出ると緊張感が走る。特に1試合で複数の死球が出ると険悪な空気が漂い始め、ついには乱闘騒ぎに発生することも。

それが1試合でなくシーズン中に大量の死球を受けていればなおのことだ。

パ5球団の西武戦での死球

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8月13日の、メットライフドームで行われた西武-オリックス戦の4回2死満塁の場面で乱闘が発生した。オリックスの若月健矢が西武の森脇亮介からの死球を受けたことがきっかけだったのだが、この日すでにオリックスは2つの死球を受けており若月が受けた死球は3つ目。しかもその時点で今シーズン19試合で17死球も受けていたのだ(試合終了後には18死球)。

昨季に続き今季の西武も12球団最多の与死球でその数は77。次に多いソフトバンクの50の1.5倍だ。その一方で受けた死球は39なのだから対戦する球団からすればたまったものではない。その中でもオリックスの受けた死球は20と15日終了時点でも最多だ。

腹に据えかねたのだろう、13日の試合ではオリックスの佐竹学コーチが森脇を両手で突き飛ばしてしまい退場処分になり、その後厳重注意と制裁金15万円を課せられた。スポーツマンシップ的にも倫理的にも暴力行為は許されないが、これだけの死球を受けては同情を禁じ得ない。

死球に怯えるのはオリックスだけではない

実はオリックス以外にも同じぐらい同情してしまうチームがある。それは楽天だ。死球数こそ3番目に多い14であるものの1試合当たりでカウントするとその数「1」。試合数が同じになればオリックスを抜くかもしれない。

そしてさらに驚くのがその内訳。強打者はインサイドを攻められることが多いためデッドボールを受けやすいと言われるが、5月まで楽天の4番を務めていた島内宏明はなんと7つの死球を受けている。

12球団被死球上位5人ⒸSPAIA

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島内の8月15日時点の死球は10でありブラッシュ、山川穂高、ビシエドに次いで多く、中村奨吾と並んでいる。そのうちの7個が西武からというのは、とんでもない数字だ。同一球団からの死球としても今シーズン最多。4月16日の西武戦では顎付近に死球を受け場内は一時騒然となった。

これだけの死球を受けても騒ぎが起きないのは、楽天というチームのスタイルなのか、今季から指揮を執る平石洋介の手腕によるものか、はたまた島内の性格によるものなのか。

何にせよ昨年同様に圧倒的な差をつけて西武の死球は12球団最多となりそうだ。全力でプレーした結果であって故意ではないのは誰もが分かることだが、残りシーズンの西武戦の一部は観戦する側からすると複数の意味で緊張感漂う試合になりそうだ。

プロ野球選手のほとんどが高校野球を経験している、いわばかつての高校球児たちの代表だ。耐えがたいこともあるだろう、チームの士気にも関わるだろう、しかしそこをこらえて、花咲徳栄の菅原のようにスポーツマンシップにのっとった試合を続けて欲しいと多くのファンは願っているはずだ。

※記事中の成績は8月15日終了時点