全試合4番で出場も物足りない成績
現在リーグ4位の阪神。ルーキー近本光司の活躍もあり、チーム盗塁数はリーグトップの68個をマーク。しかし、本塁打数はリーグ5位の69本、得点はリーグワーストの372得点と貧打にあえいでいる。
その対策として、昨季までメジャーで5年連続二桁本塁打を放ったソラーテを獲得するなど打線の強化を図っているのだが、中長期的な観点からみた場合、和製大砲候補の大山悠輔が覚醒できるか否かが阪神打線の大きな課題となってくるはずだ。
今季の大山はここまで、チームで唯一全試合先発出場を続けており、4番三塁に固定されている。打線の核として、今季から指揮を執る矢野燿大監督の期待の大きさもうかがえるが、今のところ首脳陣やファンの期待に応えられるだけの数字を残せていない。
常に大きな注目をされる球団の4番として計り知れないプレッシャーがあることは容易に想像できるが、打率.260はリーグ27位、57打点はリーグ10位タイ、本塁打はリーグ15位の11本と不動の4番としては寂しい数字が並んでいる。
ただし、二塁打はリーグ5位タイの24本とある程度の数字を残しており、殊勲打(先制、同点、勝ち越し、逆転となる安打)の回数に至っては23回と12球団トップの数字をマークしている。この数字だけをみれば、ある程度活躍をしていると言えるかもしれないが、迫力不足や勝負弱いイメージがどうしてもついてまわる。試合を決めかねない重要な場面で、初球から積極的にバットを振るのはいいももの、とらえきれずに平凡なフライに終わるケースなどが散見される。
また、守備面においても7月28日の巨人戦でゲレーロの平凡な打球を捕球ミスして今季の大山の失策数は17個に達し、これはリーグワースト。ちなみにチームの失策数もリーグワーストの83個をマークしており、喫緊の課題となっている。
ボールの見極めと逆方向への長打力が課題
大山の打撃成績についてもう少し詳しく見ていきたい。
出塁率と長打率とを足し合わせた値であるOPSはリーグ26位の.714。打者の長打力を測る指標であるIsoP(長打率-打率)をみると、大山はリーグ20位の.144と下位に低迷。ちなみに、ヤクルトの山田哲人のIsoPは.281、巨人の坂本勇人は.256、広島の鈴木誠也は.246、DeNAの筒香嘉智は.226と、他球団の主軸に大きく水をあけられている。四死球によってどの程度出塁したのかを表す指標であるIsoDも、リーグ26位の0.05と寂しい数字だ。
カウント別の成績では、0-0の打率が.489と他のカウントに比べて飛び抜けて良い。次にハイアベレージを残しているのが1-0の.383。つまり、若いカウントではよく打っている。しかし、2ストライクとなると急激に打率が低下。2-0では.115、2-1では.218、2-2では.192、2-3では.163と追い込まれると弱いことが明白。どこか勝負弱い、頼りないといったイメージは、こういうところからもきているのではないか。
また、打球方向別の打率と本塁打数をみると、左方向が.267で10本、中方向が.236で0本、右方向が.304で1本。安打は右方向にも出ているが、11本塁打のうちの10本塁打が左方向であり引っ張った打球だ。中方向や右方向に大きな打球を飛ばせるようになると、相手投手にとって投げどころの難しい怖い打者になるだろう。
カウントが悪くなった時の打率が低いことは前述したが、追い込まれても球をしっかりと見極め、自身の狙い球をしっかり捉えられるようになれば、出塁率も長打力も向上していくはずだ。
現状では、相手バッテリーの思うまま打ち取られているケースが目につく。4番三塁で試合に出続けていることは大山にとって貴重な経験であり、今後の糧にしなければならない。潜在能力が開花する瞬間を、多くのファンが心待ちにしている。
※数字は2019年8月6日終了時点