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ロッテ・涌井秀章 再びエースと呼ばれる日を目指して

2019 8/7 06:00浜田哲男
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良い流れを止めてしまうケースが散見

現在リーグ5位に低迷するロッテ。レアードの加入もありチーム本塁打はリーグ2位の120本。チーム得点はリーグ2位の452点と打撃面で好成績を残しているものの上位に上がっていけない原因は、開幕当初に先発の柱と目されていた涌井秀章(3勝7敗)、石川歩(3勝5敗)、ボルシンガー(3勝3敗)らが軒並不振にあえいでいることに他ならない。この3人で9勝15敗という成績では上に行けるはずがない。

中でも深刻なのが涌井だ。7月31日にZOZOマリンで行われたオリックス戦で先発するも、4回8安打6失点で降板。勢いに乗りかけていたチームの連勝を3で止めてしまった上、白星から11試合遠ざかることになった。これまで我慢して使い続けていた首脳陣も涌井の2軍行きを決断、8月1日に出場選手登録を抹消した。今後はファームで登板しながら調整することになる。

今季の涌井は、チームが連勝してこれからだという時に流れを止めてしまうことが多い。7月9日の日本ハム戦で、佐々木千隼が怪我から復帰後の初勝利を挙げたことを皮切りに15日の西武戦まで3連勝と勢いに乗り始めたが、16日の西武戦に登板した涌井は西武・十亀剣との投げ合いに屈して連勝をストップ。前述した31日の登板同様、チームの流れを止めてしまった。

また、今季は序盤から球数を要して走者をためるケースが目立った上、味方が先制点を奪ったり逆転してくれた直後に失点するケースも散見された。被安打116本はリーグワーストだ。

QS率をはじめ、被打率など軒並低下

今季だけではない。昨年は7勝9敗、一昨年は5勝11敗と、先発の柱と言うには程遠い成績の涌井。ロッテに移籍して2年目の2015年には15勝9敗で最多勝に輝くなど鮮やかな復活を見せたが、2016年に10勝7敗の成績を残した後は低迷が続いている。

QS率(先発投手が6イニング以上を投げ、かつ3自責点以内に抑えた登板の割合)を比較してみると、2015年は約75%と高い数値を誇っていたが、今季は約41%。序盤から中盤に大量点を奪われ降板するケースが多い。投手の能力を示すWHIP(投手が1イニング平均で与四球+被安打で許した走者数を示したもの)に関しても2015年の1.25から今季は1.41まで悪化しており、いかに走者を背負いながらの投球が多いかがわかる。

球種別の被打率にしても、スライダーは2015年が.279だったのに対し、今季は.319。シュートに関しても2015年の.311に対し、今季は.448と打たれている。また、2015年には投じていなかったカットボールの被打率が.316と、投球に良い影響を与えているとは言い難い。

もともと球種が多い投手で、前述した球種の他にもチェンジアップ、シンカー、フォーク、カーブなども投げるが、それぞれのボールにキレがなく精彩を欠いている。チェンジアップやカットボールがあまり曲がらずに真ん中高めに入り、痛打されるケースが多い。切れ味抜群のシュートやフォーク、スライダーを中心に淡々と打者を打ち取っていた全盛期の涌井の姿は見られない。

再びエースと呼ばれる投球と結果を

今季から背番号を「16」からエース番号の「18」に変更した涌井。横浜高の先輩、中日の松坂大輔が今季から18番を背負うことに刺激を受け、「松坂さんがまた18番をつけたので、自分もつけたいと思った」と、自ら18番をつけることを希望した。

当然、実績に関してはチーム随一であるし、12球団を見渡しても屈指の投手だ。五輪にもワールド・ベースボール・クラシックにも出場した。しかし、実績で野球をやるわけではない。首脳陣やファンからの信頼を取り戻すには、実績もプライドもかなぐり捨て、再びゼロから這い上がらなければならない。まだ33歳と決して老け込む年ではない。

2017年、井口資仁監督の引退試合で先発した涌井は、「絶対勝たなくてはいけない」と初回から飛ばしまくった。150kmの直球で当時日本ハムの大谷翔平から空振り三振を奪うなど、5回までに1安打9奪三振の快投を見せた。指や足がつった影響により6回途中で降板したが、鬼気迫る投球はエースの姿そのものだった。再びエースと呼ばれるような投球と結果を、多くのファンが待ち望んでいる。

※数字は2019年8月4日終了時点