大田の復帰でチームが勢いづいた
現在、首位のソフトバンクを2.5ゲーム差で追う2位の日本ハム。2016年以来3年ぶりのリーグ優勝に向けて好位置につけている。打撃陣においては、高出塁率を誇る西川遥輝や近藤健介ら何人かのキープレーヤーはいるが、今回は不動の2番打者・大田泰示に注目してみたい。
今季は腰の張りから一時離脱したものの、復帰戦となった7月16日のソフトバンク戦では、0-2と2点ビハインドの場面で本塁打を放ち、逆転勝ちに貢献。19日のロッテ戦ではダメ押しの適時打を放つなど復帰直後から打点を重ねてチームを勢いづけた。8月に入ってからは17打数3安打と不調。チームも8月に入ってからは3連敗を喫するなど、大田の不調とともに多少失速気味だ。今や大田はチームの勝敗を左右するキープレーヤーの一人として君臨している。
打点はリーグ10位、犠打はゼロ
2番最強説が広く知られるようになって久しいが、大田はその典型ではないだろうか。2番打者でありながら、59打点はリーグ10位。トップ10のその他顔ぶれは、西武の山川穂高やロッテのレアード、同僚の中田翔、楽天のブラッシュなど各チームの4番打者がひしめく。
打率.2872もリーグ9位。安打数はリーグ6位。二塁打はリーグ3位の24本をマークしている。また、攻撃的2番らしく犠打は一つもない。併殺打が楽天のウィーラーの19本に次ぐ12本(リーグワースト2位)と多いし、比較的三振も多いことは課題だが、思い切りのいい打撃と長打力は相手に脅威となっている。
西川が出塁、大田が返すパターン
12球団でも屈指と言えるのが、西川と大田の1、2番コンビだ。出塁率の高い西川が塁に出ると、相手バッテリーは西川の盗塁を警戒。そのことで大田は直球をはじめとして狙い球を絞りやすく、自身の打率や打点の向上につながっている。勝利後のお立ち台で「西川選手に打たせてもらっている」という発言もあり、西川との共同作業が相乗効果を生んでいるのだろう。
5月11日に行われた西武戦では、西川が安打で出塁すると、大田が左中間を深々とやぶる二塁打を放ち、走りだしていた西川は一気に生還した。また、以降の回にも安打で出塁した西川を一塁に置き、大田は本塁打を放った。「西川が出塁し、大田が返す」パターンは、日本ハムが誇る効率の良い得点パターンのひとつだ。
また、打球方向別打率をみると、左方向が.250、中方向が.276、右方向が.444となっており、センターから右を意識したつなぐ打撃を意識していることがわかる。その一方で本塁打は左方向が一番多く、14本塁打のうちの11本塁打をレフトスタンドにたたき込んでいる(中方向が2本、右方向が1本)。
これは、つなぐことを念頭に置き、狙える球が来た時には思い切りよく引っ張るという、状況に応じた打撃ができているということだろう。
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巨人・坂本勇人が大田のプレーに脱帽
大田は打つだけではなく、守備でも大きくチームの勝利に貢献している。昨季はUZR(Ultimate Zone Rating)で13.3をマークし、12球団の右翼手で2位となった。UZRは、リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだかを示す相対的な指標。グラウンドを多数のゾーンに区分けし、各ゾーンに飛んできた打球の種類や速度といったデータを基盤として算出されている。
6月14日に札幌ドームで行われた巨人との交流戦では、5回表に巨人の坂本勇人が放った右方向への大飛球を大田がフェンスに激突しながらもしっかりと捕球。相手に流れを渡さない、まさにスーパープレーだった。大田の脚力や持ち前のガッツが存分に凝縮されたプレーに対して、坂本は塁上で大田に向かって脱帽。かつての同僚に敬意を払うと、大田もダッシュでベンチに戻りながら坂本に応えて脱帽。互いのプレーを称え合った。
2016年11月、交換トレードにより北の大地にやってきた未完の大器。8年間在籍した巨人では、類い稀な潜在能力を開花させることはできなかったが、その能力は環境を変えたことで引き出され、チーム内での存在感も年を追う毎に高まっている。そして今、大田はチームの命運を握るプレーヤーのひとりと言っても過言ではない。3年ぶりのリーグ優勝を果たすためには、この男の力が必要不可欠だ。
※数字は2019年8月4日終了時点