村上宗隆が松井秀喜以来の20本塁打
今シーズン、セ・リーグ最下位に沈んでいるヤクルト。7月終了時点で借金は「21」。3位の広島とも12ゲーム差と後がない状況になっている。
その中で注目を浴びているのが19歳の若武者・村上宗隆である。今シーズン、もっともブレイクしているといっても過言ではない左の大砲だ。
村上は高卒2年目の19歳ながら開幕スタメンを手に入れると、4番を任されるようになり、前半戦だけで20本塁打を記録している。高卒2年目までの20本塁打は、1994年の松井秀喜氏以来25年ぶりということからもその凄さはよくわかる。
筆者の印象では、村上は逆方向へのあたりも多く、全方向へまんべんなく打球を飛ばしている印象を受けるが、実際はどうだろうか。村上の打球方向を調べてみた。
逆方向への本塁打割合は30%
前半戦までの記録を集計してみると、村上の本塁打で最も多かったのが右方向へのあたりだった。その数は20本塁打の内55%にあたる11本。半分以上は右方向、すなわち引っ張った打球なのである。左打者である村上にとって逆方向となる左方向へは6本。割合にして30%だ。中堅方向へは3本で15%となっている。
村上ひとりだけの数字を見ても、これが多いのか、それとも少ないのかはわかりにくいかもしれない。そこでNPBの左打者全体(両打の左打席含む)の数字と比較してみる。

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前半戦における全左打者の左方向への本塁打は19%となっている。やはり、流し打ちにあたる左方向へのあたりは右方向に比べると、1/3以下とかなり少ない。NPB全体では右方向が66%、中堅方向が15%となっており、村上と中堅方向への本塁打割合は同じである。
やはり村上は印象通り逆方向に多く本塁打を放っていた。
全打球結果から見えてきたものとは
本塁打以外の打球はどうだろうか。安打(本塁打含む)・凡打・全打球それぞれの比較が下記の表になる。この表から、打球結果に関わらず、村上はセンター方向に平均よりも高い割合で打球を飛ばしていることが見てとれる。

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一般的な打球傾向としては、引っ張り方向への打球が多くなる。引っ張った方が流し打つ逆方向よりも力強い打球を打ちやすいため、特に強打者はその傾向が強い。村上も例に漏れず、引っ張りとなる右方向への打球が最も多くなってはいるが、センター方向にも同程度の数字を残している。
この結果から、村上は打撃の基本と言われるセンター返しを意識したバッティングを心がけていることがうかがえる。そのため、本塁打を含む安打、すなわち強い打球を引っ張るだけでなく、センターより左方向にも打てていると推測される。これが、前述の逆方向(左方向)への本塁打の割合が平均を大幅に上回る結果に結びついているのだろう。
打者にとって逆方向への強い打球を打てることは大きな強みとなる。もちろん、今回のデータは前半戦のみでサンプル数が少ないため、このデータだけで「村上は逆方向に強い打球を放っている」と結論づけることはできない。ある程度のデータが揃う1年が終わったときの打球傾向がどのようになっているか楽しみだ。
※表内データは2019年前半戦終了時点