攻守で勝利に貢献し、チームを勢いづける
7月28日に敵地・神宮球場で行われたヤクルト戦。広島は投打がかみ合い12-5で快勝し、連勝を9に伸ばした。7月17日の時点で首位の巨人と12ゲーム差をつけられていたが、わずか10日あまりで5ゲーム差まで詰め寄った。
一時は遠のき始めたと思われたリーグ4連覇だが、怒濤の連勝で勢いに乗る広島が、このまま一気に抜き去る可能性まで出てきた。7月15日のDeNA戦から1番に入り、毎試合のように安打を重ねる西川龍馬など連勝の立役者は何人かいるが、中でもチームに勢いをつけているのが、高卒ルーキーの小園海斗だろう。
7月16日のDeNA戦に8番遊撃で起用されて以降、11試合連続でスタメン出場。この期間の通算打率は38打数13安打で.342のハイアベレージ。広島の高卒ルーキーとしては1967年の三村敏之以来、52年ぶり3人目となる2本以上の本塁打もマークするなど、戦力として打線の中でしっかりと機能している。
28日の試合では今季第2号を放った後に、三遊間の深い当たりを素早い動きと強肩でさばくなど攻守で勝利に貢献。今や不動のリードオフマンであり正遊撃手の田中広輔からポジションを奪い取っている形だ。小園が打てばベンチが一気に勢いづくし、何よりも野球を心から楽しんでいることが伝わる清々しい笑顔が印象的だ。高卒ルーキーの小園が、逆転優勝のキーマンとなる可能性も想像できるようになってきた。
高卒ルーキーらしからぬ、圧巻の対応力
走攻守で期待されている小園だが、目を見張るのは高卒ルーキーらしからぬ柔軟な対応力だ。もともと直球に強く、150km超のプロの直球でもアジャストする場面が見られたが、そうなると当然、相手の攻め方も変化球主体に変わってくる。
28日のヤクルト戦では左腕・大下佑馬が初球にスローカーブを投じたが、小園はバランスを崩されることなく振り抜くと、打球は一直線にライトスタンドに飛び込んだ。初球から思い切りバットを振り抜けることもすごいが、それを完璧に芯でとらえてしまうのだから驚いた。非凡な野球センスをまざまざと見せつけられた瞬間だった。
安打の打球方向をみると、左方向が2本、中方向が8本、右方向が6本と、センター中心に打ち返していく打撃が数字にも表れている。規定打席未到達ながら、打率.286、出塁率.298、得点圏打率.286と十分な数字を残しており、小園が8番にいることで打線に厚みと勢いが生まれていることは確かだ。8番というあまりプレッシャーのかからない打順も好影響を与えているのだろう。26日から始まったヤクルト3連戦では、初戦で4安打、3戦目で3安打と猛打賞をマークしており、固め打ちができることも魅力だ。
“メークドラマ”には“メークドラマ”でお返しを
1996年、シーズン中盤までは広島が首位を独走。多くのファンが広島の優勝を信じて疑わなかった。しかし、最大11.5ゲーム差をつけられていた巨人の快進撃が始まり、広島は首位の座を奪われた。その勢いのまま巨人はリーグ優勝を成し遂げ、当時の長嶋茂雄監督が発した“メークドラマ”というワードがメディアを賑わせた。
今季、最大12ゲーム差をつけられていた広島が、このまま巨人を抜き去りリーグ優勝を成し遂げれば23年前の雪辱を果たすことにもなる。優勝チームには必ずと言っていいほどラッキーボーイが存在するものだが、それが小園になる可能性だって十分にある。
※数字は2019年7月30日終了時点