西川龍馬が新・1番打者として先頭打者弾2本
後半戦に入り、息を吹き返してきた広島。11連敗で終えた前半戦と比べ何が変わったのかといえば、攻撃面では西川龍馬の打撃と、その起用方法だろう。
昨季は規定打席未到達ながら打率.309を残し、丸佳浩の穴を埋める主軸候補のひとりとして注目された。そして4年目のシーズンとなる今季、24歳となった西川。チームが月間20勝を挙げた5月は5番打者に定着し、月間打率.366の絶好調。6月にかけては、球団史上2位の27試合連続安打という記録も作った。
その後調子を落とし、5月末には一時.311あった打率も前半戦終了時には2割6分台まで下がっていたが、後半戦スタートから1番打者を任されるようになると、「天才」と称されるバットさばきが戻ってきた。
連勝がはじまった19日の巨人戦では、菅野智之から4打数3安打1打点2得点をマークして5点差をひっくり返す逆転劇に貢献。カード3戦目の21日は、シーズン途中からエース級の投球を見せている桜井俊貴のインハイ直球を右翼スタンドに運び、キャリア初となる先頭打者本塁打を放った。
さらに24日の中日戦でも、山本拓実が投じたボール気味のインハイ直球を強引に引っ張り込み、再び先頭打者弾。打順が変わっても、悪球打ちも辞さない積極的な打撃スタイルで結果を残している。この日まで、後半戦は全試合1番打者として打率.375、出塁率.412、長打率.625、OPS1.037の好成績だ。
「切り込み隊長不在問題」解決なるか
「ハマった」という形になりつつある1番・西川の新オーダーだが、今季の広島は1番打者の起用に苦戦してきた。
3連覇を果たした昨季まで広島の1番打者といえば、2017年に最高出塁率・最多盗塁のタイトルを獲った田中広輔でほぼ不動。しかし今季の田中は打率1割台の不振に陥り、昨季打撃面で飛躍したかに思えた野間峻祥、巨人で長年トップバッターとして活躍してきた長野久義も調子が上がってこない。


ⒸSPAIA
昨季の1番は田中が前年からやや成績を落とし、下位に回る時期があった中でも、出塁率は3・4番に次ぐ.366を残していた。
今季の前半戦までの打順別成績を見ると、1番は打率.194、出塁率.266、長打率.242、OPS.508、1本塁打という数字。1番はどの部門も8番までの打順で最も低く、長打率に関しては、スタメンでは投手が入る9番よりも低い。貧打に悩んだチームにあって、切り込み隊長の不在は最大の穴といえる状況だった。


ⒸSPAIA
ただ、上記のように後半戦は一転して、西川の好調により1番が打率トップ。他球団の1番打者と比べても、亀井善行や若林晃弘がトップに入る巨人と並び、抜けた数字を残している。重ねてバティスタが3番打者として復活し、全体的に打線に厚みが出てきた。
今季のプロ野球は最近でもDeNAの筒香嘉智など、2番に強打者を置くチームがこれまでになく増えているが、この策の目的は「優秀な打者にできるだけ多くの打席を回すべき」という点にある。そういう意味では、本来1番もチーム内でいい打者を置きたい打順だ。
ようやく、その大事な打順にマッチする打者が出てきた。西川がこのまま好調を維持し、切り込み隊長として打線を引っ張っていけるかどうか。広島が大逆転4連覇を果たすためのポイントとして注目していきたい。