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ソフトバンク一筋の明石健志 ファンに愛される理由はここぞの一打

2019 7/28 11:00浜田哲男
BASEBALLⒸSPAIA
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貴重なユーティリティープレーヤー

7月24日、本拠地で迎えたロッテとの一戦。4-4の同点で迎えた8回裏、1死走者なしで打席に入ったのは明石健志。センターへのクリーンヒットで出塁すると、その後に二盗を決め、代打・栗原陵矢のタイムリーで本塁に生還。

これが決勝点となり、5-4でソフトバンクが勝利。序盤に点の取り合いとなった後、両チームの投手陣の踏ん張りで緊迫した展開となった中盤以降、重苦しいムードを打開したのは紛れもなく明石だった。

今季はここまで56試合に出場。任された打順は1番、2番、6番、7番と多岐にわたり、7月17日の日本ハム戦では3番にも入った。守備位置も様々で、二塁をはじめ、一塁、左翼とあらゆるポジションをこなしている。

柳田悠岐や松田宣浩が派手な活躍を見せる一方で、明石や中村晃、福田秀平といったユーティリティープレーヤーの存在があるからこそ、ソフトバンクが安定した強さを保っていられると言っても過言ではない。

ここ一番で放つ記憶に残る一打

打撃の柔らかさや身体能力は球界でもトップクラスとも言われる明石。だが、入団以来、打撃面で特筆すべき数字を残しているわけでも、毎年シーズンを通して活躍しているわけでもない。ただ、ここ一番でファンの記憶に残るような一打を放つ印象は強い。

例えば、2018年の広島との日本シリーズ第5戦。3-4と1点ビハインドで迎えた7回裏、広島の絶対的なセットアッパー・フランスアから、打った瞬間にそれと分かる起死回生の一発をライトスタンドにたたき込んだ。この試合は延長10回の激闘の末にサヨナラ勝ちをおさめており、その勢いのまま第6戦もソフトバンクが勝利し日本一に輝いた。

今年4月25日のオリックス戦でも印象的な活躍を見せている。それまでの数試合では打撃不振に陥っていたが、延長10回裏に好機で打席が回ってくると、肩口から入ってくる変化球を一閃し、打球はライトスタンドのポール際へ一直線。チームを劇的な勝利に導くサヨナラ3ランを放ち、同時にこれが今季初安打となった。

また、昨年10月6日に行われた本多雄一の引退試合に華を添えたのも明石だった。8回裏1死二塁、代打で登場すると、西武の今井達也からシーズン第1号の2ラン。この一撃で1番に入っていた本多に現役最終打席となる5打席目が巡り、左中間へ二塁打を放った。今季でプロ入り16年目を迎えるが、通算本塁打は12本の明石。いかに、ここぞという場面で打っているかが分かる。

ファンからは、「以前からチームの窮地を救う活躍が多かった」「日本シリーズ以来のホームランが劇的弾とは恐れ入りました」「ポンちゃん(本多の愛称)の引退試合といい、記録より、記憶に残るホームラン。明石はやっぱりホークスの宝だ」「シーズン通しての活躍はしたことないけど、要所要所で印象を残すのはなんなんやろうな」「明石って本当にここって言う時に打ってくれるから超好き」といった声がSNSには寄せられている。

普段は脇役でありながら、大事な場面でド派手な活躍を見せ、チームを勝利に導く。これが、明石が多くのファンに愛される理由だ。

ホークス一筋16年

今季で16年目を迎える明石は、ダイエー時代を知る唯一の生え抜き選手。ここまでの歩みは決して順風満帆ではなく、2005年には右肩上方関節唇縫合手術、2008年には右手第2・3指骨折、2010年には左足甲の骨折、2012年にはぎっくり腰、2018年には腰痛発症、今年2月には脊椎全内視鏡ヘルニア摘出手術など、怪我との戦いでもあった。

ただでさえ選手層が厚く、ポジション争いの激しいソフトバンク。度重なる怪我に悩まされれば、とうの昔に厳しい立場に追いやられていてもおかしくはない。しかし、明石は与えられたチャンスをものにし、常にチームに必要とされてきた。

ブレイクした2012年には遊撃手として開幕戦に出場するも、正二塁手の本多がシーズン前半に怪我で離脱すると二塁に。同年のシーズン後半に正三塁手の松田宣浩が死球を受けて離脱すると、三塁手としてスタメンで46試合に出場した。また、一塁にまわることもあり、打順も1番、2番、9番と様々な打順を任された。

決して派手さはないユーティリティープレーヤーだが、こういう選手がいるからこそ、ソフトバンクが常勝チームであり続けることができるのだろう。