ソフトバンクはつながり、日本ハムは長打力に課題
ソフトバンクが調子を落とし、パ・リーグは再び混戦模様となってきた。対抗馬として最も有力なのは、後半戦最初のカードでソフトバンクに3連勝した2位の日本ハムだろう。
ここまで(7月21日終了時点)の両チームのデータを見ると、ともに売りは投手力。チーム防御率は、ソフトバンクがリーグトップの3.42、日本ハムは3.74で2位。ただし、セイバーメトリクスの指標では投手力(FIP)と野手の守備力(DER)、どちらも日本ハムが上回る。ディフェンス面において、両チームの力は高いレベルで拮抗していると言える。

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【FIP】バックの守備力による影響を排除して投手の責任である被本塁打、与四死球数、奪三振数のみで投手の能力を評価する
【DER】グラウンドに飛んできた打球のうち、野手がアウトにした割合。 チーム全体の守備力を表す
一方、攻撃面の数字はというと、1試合あたりの得点は日本ハムが4.21でリーグ4位、ソフトバンクが4.08で5位。どちらもリーグ内で得点力は下位に位置する。ディフェンスが安定している分、得点力の向上がV争いの鍵となっていきそうだ。
ソフトバンクは1試合あたりの本塁打数が1.32本とリーグトップ。しかし、出塁率は.309でリーグ5位とつながりに欠け、主軸の圧倒的な長打力を効率よく得点に結びつけられていない。

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日本ハムは、出塁率がリーグ3位の.333とまずまずだが、1試合あたりの本塁打数が0.69本、長打率が.380とともにリーグ5位。広い札幌ドームをホームとする事情もあるが、長打力に課題を抱えており、ソフトバンクとは対照的だ。
ソフトバンクは1・2番に悩み
次に、前半戦終了時点での打順別成績を比較してみると、こちらも両チーム対照的な課題が見えてきた。
まず、ソフトバンクの打順別成績を見てみると、1・2番打者に課題を抱えていることがわかる。ここ最近の球界でブームとなっている「2番強打者論」は、良い打者にできるだけ多く打席を回すべきという理論に基づいているが、ソフトバンクの場合、1・2番のOPSが下位の6・7・8番よりも低い。チームとしての課題である出塁率も2割7分台と、チャンスメークの役割を果たせていない。

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今季の1・2番打者はというと、開幕スタメンは1番・牧原大成、2番・今宮健太の二遊間コンビ。しかし、今宮は交流戦終盤に故障で離脱。牧原のほかに釜元豪、周東佑京、三森大貴といった売り出し中の若手に加え、明石健志、福田秀平、川島慶三のベテラン勢も1・2番を務めたが、なかなか上位の形は決まってこない状況だ。
そんな中、これから楽しみにしたいのは一軍合流が間近とされる今宮の復活。序盤戦は首位打者を争うほどの好調ぶりを見せていた。だが、徐々に調子を落とし、ケガによる離脱時点での成績は、.271/.333/.415(打率/出塁率/長打率)となっていた。ファームでの調整を経てどれだけ状態が戻っているか注目だ。
もう一人復活してもらわないと困るのが、打率1割台に苦しむ上林誠知だ。22本塁打を放った昨季は1・2番として多くの試合に出場していたが、今季は4月に死球で右手を骨折した影響もあり、不振で下位打線がメイン。1・2番が固まらない直接的な原因となってしまっている。
実績十分なこの2人の復活が終盤戦の鍵を握るのではないだろうか。
下位打線が薄い中、王が離脱した日本ハム
ソフトバンクとは対照的に、1・2番が打線をけん引している日本ハム。西川遥輝が不動のリードオフマンとして座る1番は、.384の高出塁率をマーク。大田泰示が座る2番はチームトップの長打率.471と、「攻撃型1・2番」として理想的な形が出来上がっている。

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課題は主に捕手、二塁手、遊撃手と、守備力を重視される選手が入る6番以降の下位打線。クリーンナップの数字はソフトバンクとそん色ないが、下位打線の厚みには大きな隔たりがある。5番を打っていた王柏融が怪我で離脱した今後は、さらに厳しい状況も予想される。
今後の下位打線のキーマンとして期待したいのは、最近、遊撃手として攻守で存在感を示している石井一成だろう。また、打力を見込まれ6月末にトレード加入した捕手の宇佐見真吾も、間違いなく下位打線強化の鍵を握る存在だ。
一方、夏場に入って苦しんでいるのが2年目のシーズンを迎えている清宮幸太郎。右手有鉤(ゆうこう)骨骨折から復帰した直後は球団8000号のメモリアルアーチを放つなど目立ったが、ここまで本塁打は2本にとどまり、6月22日から7月19日までは32打席連続無安打と長いトンネルに入った。
それでも栗山英樹監督は清宮を使い続け、20日・21日のロッテ戦では9番打者として続けてタイムリーを放ち、復調を予感させる打撃を見せた。長打力がチームとしての課題となっているだけに、長距離砲である清宮の覚醒は、逆転Vへ向けて欠かせない条件かもしれない。