既にキャリアハイの項目も
前半戦を首位で折り返したソフトバンク。柳田悠岐や中村晃らの主力を欠きながらも選手層の厚さで乗り切り、2位日本ハムとは7ゲーム差をつけて独走体勢に入っている。
そんなソフトバンクの扇の要・甲斐拓也が、今季は自慢の肩に加え、打撃面や走塁面でも向上。例年は2割前半の打率だったが、今季は.262とまずまずの成績。本塁打は昨季の7本を上回る9本を放っており、打点も既に31打点(昨季は37打点)。さらに、プロ入り通算6盗塁だったが、今季だけで7盗塁をマークしている。
これまでは、球界随一とも言われる素早いフットワークと甲斐キャノンとも称される強肩を前面に押し出し、守備のプレーヤーというイメージだった。だが、徐々にそのイメージが変わってきた。
とはいえ、今季も守備面で活躍。盗塁阻止率はオリックスの若月に次ぐリーグ2位の.362(昨季は.447で12球団の捕手の中で唯一4割超をマーク)。チーム防御率はリーグトップの3.44と、投手陣を牽引する働きを見せている。
PSランキングでリーグ5位
セイバーメトリクスの指標でPS(Power-Speed-number)という項目があり、算出式は(本塁打×盗塁×2)÷(本塁打+盗塁)。この数値が大きいほど、パワーとスピードを兼ね備えた打者ということになる。
甲斐は現在、このPSがリーグ5位。西武の外崎修汰や秋山翔吾、ロッテの中村奨吾や荻野貴司といった走攻守のバランスのとれたプレーヤー達に次ぐ数値を残している。
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昨季は1本もなかったセンター方向への本塁打を1本放ち、ライト方向へ流し打つ本塁打も4本放っている(昨季は2本)。このことからも分かるように、元来持ちあわせていたパンチ力が、打撃に活かされるようになってきた。今季の甲斐は、どの方向にも満遍なくヒットを放っている印象だ。
7月5日~7日にかけて行われたオリックスとの3連戦では、3試合連続でマルチ安打をマークするなど、固め打ちも見せている。甲斐の打撃力に昨季以上の期待感が持てることからも、ソフトバンクの強力打線はますます切れ目のない打線となっている。
ただひとつ課題を挙げるとすれば、.210という得点圏打率の低さだろう。甲斐の打撃に勝負強さが出てくれば、ますます怖い打線となる。
ソフトバンクの要であり日本代表の要
ソフトバンクの要としてと同時に、日本代表・侍ジャパンの要としての期待もかかる甲斐。今年11月には第2回プレミア12が開催され、来年には東京五輪、再来年には第5回ワールド・ベースボール・クラシックが控えるなど国際大会が目白押しだ。
これまでも、2017年に開催されたアジアプロ野球チャンピオンシップや以降の強化試合で正捕手として侍ジャパンのマスクをかぶってきたが、打撃面での物足りなさがあった。しかし、現在進化を見せている打撃がさらに向上していくようであれば、正捕手は文句なく甲斐で決まりだろう。阪神の梅野隆太郎や西武の森友哉らも候補に入ってくるはずで、レベルの高い正捕手争いを期待したい。
いずれにせよ、守りながら攻めることのできる甲斐キャノンはソフトバンクが誇る唯一無二の武器。後半戦でも国際大会でも、相手にとって脅威になることは間違いない。