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オリックス・海田智行 防御率0.73、被打率.198で抜群の安定感 いぶし銀のサウスポーがブルペンを支える

2019 7/13 07:00浜田哲男
BASEBALLⒸSPAIA
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目立たずとも貢献度は大きい

前半戦をリーグ最下位で終えたオリックスだが、2位の日本ハムとの差はわずか4ゲーム差と、まだまだ十分に巻き返せる。チームの得点数293、同本塁打数55本、同打率.234はいずれもリーグ最下位。打線の不振が順位に影響していることは明らかだが、投げる方では明るい話題も多い。

特に今季は若手の先発投手が躍動。今季から先発に再転向した山本由伸を筆頭に、山岡泰輔、榊原翼、K-鈴木、故障から復帰した田嶋大貴と、20代前半の投手達がチームを牽引している。守護神の増井が不振で2軍落ちという誤算もあったが、増井の代わりにクローザーを務めているディクソンやベテランの比嘉幹貴、エップラーらリリーフ陣も踏ん張りを見せている。

これほど打てなければ本来は、ずるずると下降線をたどり、他チームとのゲーム差も更に開いていただろう。リーグ最下位とはいえ、交流戦では11勝6敗でソフトバンクに次ぐ2位と、まだまだ逆襲の余地はある。この位置に踏みとどまっていられるのは、粘り強く投げている投手陣のおかげだ。中でも、目立ちはしないがリリーフ左腕・海田智行の貢献度が大きい。

抜群の安定感を誇るセットアッパー

海田はこれまで29試合に登板しており、防御率0.73、被打率.198と抜群の安定感を誇っている。中でも特筆すべきは制球力。27個のアウトを取る間(1試合の間)に四球をいくつ与えるかを示すセイバーメトリクスの指標・BB/9(四球率)は、1.46と抜群の数字を残している。打者と95回対戦し、与えた四球はわずか4個。制球が安定していて無駄な四球がないため、終盤の緊迫した場面、走者を背負った場面でも安心してマウンドに送ることができる。

奪三振率は低く三振をとるタイプの投手ではないが、抜群の制球力で打たせてとる投球を展開。今季はいまだに本塁打を打たれていない。4月5月にはホールドポイントがつかなかったが、6月には6ホールドポイントを挙げてチームの交流戦2位に貢献。7月は2日のロッテ戦から1日おきに登板し、7月10日終了時点で既に5ホールドポイントを挙げている。

月別の成績ⒸSPAIA

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カットボールを中心とした組み立て

海田の球種配分をみると、カットボールが約39%と最も多く(直球は約26%)、次いでフォークが約19%、スライダーが約16%となっている。カーブもあるが、ほとんど投じていない。今季の直球の最速が145km(これまでの最速は146km)と球速があるわけではないので、カットボールを中心としたコンビネーションによって、いかにバットの芯を外すかが肝となる。

投球フォームは大きな癖がなく、体重移動がスムーズでバランスが良い。右打者でも左打者でも外角の低めを淡々とつく丁寧な投球が際立つ。投球フォームに癖や威圧感があるわけでもなく、絶対的なウイニングショットがあるわけではないため、打者にとってみれば、打てそうだけれども何となく打ち取られてしまうケースが多いはずだ。

後半戦もその存在は不可欠

オリックスが後半戦で巻き返していくためには、引き続き投手陣の踏ん張りが必要不可欠。特に経験豊富な技巧派左腕、海田の存在は欠かせない。2017年に横左肘の関節遊離体除去とクリーニング手術を受けた影響もあり、同年と2018年の成績は振るわなかったが、2015年には48試合に登板し防御率2.61、10ホールドポイントをマーク。2016年には50試合に登板し防御率2.78、16ホールドポイントをマークしている。

右のセットアッパーの中心が比嘉であれば、左のセットアッパーの中心は海田だ。山本をはじめとした若手の先発陣と、中堅やベテラン、助っ人外国人で構成するリリーフ陣が強固な投手リレーを見せれば、チームが大きく崩れることはない。今後、シーズン終盤に向けて痺れる試合が増えれば増えるほど、海田の出来が勝敗を左右することになる。淡々と打者を打ち取っていく姿を後半戦も期待したい。