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「スーパーカートリオ」に迫る西武「超高速トリオ」 40盗塁3人なら史上2度目

2019 7/3 11:05青木スラッガー
埼玉西武ライオンズの源田壮亮と外崎修汰と金子侑司ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

昨季より進化した西武の機動力野球

今季も12球団トップの得点力を誇る西武は強打に加え、「足技」でも他球団を圧倒している。交流戦を終え、リーグ戦再開から最初の1カードを終えた時点で、12球団トップのチーム盗塁数83個を記録。1試合あたり1.14個と12球団で唯一、試合あたりの盗塁数が1を超えている(2位はオリックスの0.92個)。

圧倒的な打力でリーグ制覇を果たした昨季も、西武のチーム盗塁数は132個で12球団でトップを記録し、機動力が大きな武器となっていたが、それでも1試合あたりの盗塁数は0.92個だった。また、盗塁成功率も昨季の73.3%に対し今季は75.5%と、より積極的になった上に失敗も少ないという「ワンランク進化した機動力野球」を展開している。

逆転のきっかけとなった、4番・山川の打席でのダブルスチール

先日のゲームでも、西武の機動力野球を象徴するシーンがあった。3回に2点を先制されるも、最終的に11対3と大勝した6月30日のオリックス戦(メットライフドーム)。終盤は打線が爆発して試合を決めたが、逆転の足掛かりをつくったのは足技だった。

0-2で迎えた3回裏の攻撃。西武は1番から秋山翔吾、源田壮亮、外崎修汰の3連打で1点を返し、ノーアウト一三塁の好機で4番・山川穂高が打席に立つ。ここで、2球目に一塁走者の外崎がスタートを切った。二塁は余裕を持ってセーフ。さらに、捕手の手からボールが離れた瞬間、三塁走者の源田がホームに突進していた。二塁手の福田周平はホームに投げ返すことができず、ダブルスチール成功で同点に追いついた。

一三塁時のダブルスチール自体はそれほど珍しい作戦ではない。しかし、このとき打席に立っていたのは、試合時点で両リーグダントツの27本塁打と67打点をマークしていた山川だ。それも序盤の3回。焦らず4番にどっしり打たせるのがセオリーというところだろう。こういう場面でもスキが見えれば走り、取れる1点を逃さないのが今季の西武の攻撃だ。

「スーパーカートリオ」に迫る「超高速トリオ」

選手一人ひとりを見ると、先のダブルスチールを見せた2人は源田が20盗塁、外崎が15盗塁を決めている。そして、最近は主に9番に入る金子侑司が、両リーグダントツの26盗塁。球団が「超高速トリオ」と命名した彼らがパ・リーグ盗塁数トップ5の3つを占めている。

これだけ走れる選手が同じチームにいること自体珍しいのだが、トリオでの盗塁記録はどのようになっているのだろう。

「30盗塁トリオ」は井口資仁(42)、村松有人(32)、川崎宗則(30)の2003年ダイエーが最後。もうひとつ難易度を上げて「40盗塁トリオ」となると、プロ野球史上でたった1度しか達成されていない。高木豊(42)、加藤博一(48)、屋鋪要(58)の1・2・3番打者が合計148盗塁を決めた1985年の大洋ホエールズ。「スーパーカートリオ」と呼ばれ注目を集めた3人である。

現時点の盗塁数をシーズン成績に換算すると、金子51盗塁、源田39盗塁、外崎29盗塁。外崎がもう少しペースを上げられれば、「スーパーカートリオ」以来の快挙も夢ではないというところだ。

攻撃の生命線となる3人の足技

不動の3番打者であった浅村栄斗が退団し、今季の西武打線に昨季ほどの「破壊力」はない。昨季のチーム打率.273に対し、今季は打率.263。1試合あたりチーム本塁打数も昨季は1.37本から1.16本に減少。得点と強い相関があるチームOPS(出塁率+長打率)は.806から.763と、軒並み数字が下がっている。

しかし、チーム得点数は昨季の1試合あたり5.4得点に対して今季は5.29得点と、微減にとどめている。これは「足」で、浅村の抜けた打線の穴を補えている部分が大きいだろう。

チーム盗塁数の大半を占める「超高速トリオ」がその攻撃の生命線だ。「スーパーカートリオ」の記録にどれだけ迫れるか……ここが上位浮上のカギを握っている。

※数字は2019年6月30日終了時点