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年間70試合超は危険水域? ヤクルト中継ぎ陣にかかる負担と懸念

2019 6/16 11:00勝田聡
ヤクルトのマクガフ(左)とハフ(右)ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

ハフが70試合超の登板ペース

近年のプロ野球では投手の分業制が当たり前となった。先発投手、中継ぎ投手の役割はチームの中でほぼ明確に線引きがある。

その中継ぎの中でも抑え投手は決まっており、僅差のリード時は7回、8回を投げるいわゆる「勝ちパターン」まで固定されていることが一般的となっている。そんな中継ぎ投手は登板過多になることも多く、複数年にわたって一線級で活躍できる選手は多くない。

もちろん個人差があるため、試合数や登板回数、球数を用いて同じ物差しではかることは難しい。しかし、全143試合のおよそ半分にあたる70試合を超える登板数は、登板過多と取り上げられてもおかしくないだろう。

現在最下位に低迷しているヤクルトは先発投手陣の不調もあり、中継ぎ陣の負担が大きくなっている。

主な中継ぎの登板数ⒸSPAIA

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ヤクルト中継ぎ陣の中で、先ほど言及した70試合を超える登板数となりそうなのがデーブ・ハフだ。また、スコット・マクガフも69.3試合と危険水域にある。他にも60試合を超えるペースの投手が複数名おり、登板過多が懸念される状況となっている。

昨季は石山と近藤が70試合以上に登板

今季はハフをはじめとして数人が70試合の大台に手が届きそうだが、昨季70試合以上登板した投手たちは今季どのような成績を残しているのだろうか。

昨季、チーム最多登板となったのは近藤一樹(ヤクルト)の74試合だった。近藤はセットアッパーとして主に8回を担当。前年の54試合から大幅に登板試合数を増やした。その奮闘はチームの2位躍進にも大きく貢献し、自身も初のタイトルとなる最優秀中継ぎを受賞している。まさに近藤の存在なくしてチームの2位はなかった、と言えるほどの活躍であった。

その近藤は今年もセットアッパーとして開幕から起用されていたが、調子は上がらず、現在は「勝ちパターン」から外れている。

ここまでの29試合で防御率2.89とまずますの数字を残しているが、BB/9(1試合あたりいくつの与四球をだすかを表す指標)は3.64から6.75へと大幅に悪化。WHIP(1回あたりにどれだけの走者を出すかを表す指標)は1.37から1.57へとこちらも悪化しており、四球で走者を出す苦しい投球が続いている。

昨季守護神を務めた石山泰稚も71試合に登板していた。今季も守護神として開幕したが、5月6日にコンディション不良で登録を抹消。すでに一軍へと復帰したが、現在は守護神の座を梅野雄吾へと譲りセットアッパーとして起用されている。

昨季2位へと躍進したヤクルトの立役者である2人が、ともに本来の持ち場とは違う場所へと配置転換されてしまっているのである。

秋吉亮(日本ハム)も70試合登板以降は苦しむ

昨季、70試合以上に登板したことが原因で、今季の不調や故障につながったかは特定できないが、結果的に翌年以降、成績が下降してしまっている。

彼ら2人の他にも近年のヤクルトでは秋吉亮(現・日本ハム)が2015年(74試合)、2016年(70試合)と登板し、結果を残していたが、2017年、2018年は故障するなど不振に陥ってしまった。

今季は日本ハムに移籍し守護神として活躍していたが、肉離れの影響で現在は登録を抹消されている。秋吉も結果的に70試合以上の登板を2年続けて以降、苦しんでいることになる。

ハフ、マクガフは外国人選手ということで、現時点において来季の契約が保証されているわけではない。しかし、ここまでチームに欠かせない存在となっていることは間違いなく、「来季も契約して欲しい」と願うファンも多いだろう。

はたして、残り試合はどのような起用法になっていくのだろうか。70試合という分水嶺には注目しておきたい。

※数字は2019年6月13日終了時点