打者の受賞が多いMVP
2019年の交流戦も終盤戦。少し早いが、今年のMVPは誰か気になるところだ。
これまで複数回受賞したのはソフトバンクの柳田悠岐のみ。過去14回のうち、投手が受賞したのは4人で、2012年の内海哲也(西武、当時巨人)以来、打者の受賞が続いている。
MVPはバリバリのスター選手に限らないため予想するのは困難だ。一番、印象に残っているのが2016年のMVP・城所龍磨である。
2019年の交流戦も終盤戦。少し早いが、今年のMVPは誰か気になるところだ。
これまで複数回受賞したのはソフトバンクの柳田悠岐のみ。過去14回のうち、投手が受賞したのは4人で、2012年の内海哲也(西武、当時巨人)以来、打者の受賞が続いている。
MVPはバリバリのスター選手に限らないため予想するのは困難だ。一番、印象に残っているのが2016年のMVP・城所龍磨である。
城所は野球ファン、とりわけイチローウォッチャーの間では、かなり有名な選手だった。
15年3月、フロリダ・マーリンズ移籍1年目のイチローは、スプリングトレーニングに日替わりでユニークなTシャツを着て登場した。
初日のTシャツにはチームのキャラクターであるカジキマグロのかぶりものをかぶったイチローらしきイラストと、「おうえんしてくださいなんて~ いわないよ じぇったい~」というセリフが手書きで描かれていた。
そこから連日、アディダスやラコステのロゴのパロディや、ビックリマンチョコのキャラクター・スーパーゼウスが描かれたものなどが続き注目を集めたが、日本のファンを喜ばせたのは「キドコロ待機中」のTシャツだった。キドコロって誰だっけ?と、日本では静かなキドコロフィーバーが起こったのである。
このTシャツは、リードした場面での守備固めや代走で登場する城所本人が監修した球団の公式グッズで、当時、発売を終えていたのだが、この年の自主トレ中に、城所がイチローに手渡ししたものだったようで、このニュースを知った球団があわてて再発売したことが話題にもなった。
2018年のシーズン終了後に戦力外通告を受け現役引退。現在は球団職員として野球の振興や普及に携わっているいぶし銀のバイプレイヤーに、眩いばかりのスポットライトが当たったことがある。
それが16年の「日本生命セ・パ交流戦」。城所は、そうそうたる選手たちを押しのけてMVPを獲得したのだ。
城所は交流戦18試合のうち15試合に出場し、打率.415(1位)、5本塁打(5位)、12打点(12位)、6盗塁(3位)という見事な成績を挙げた。
NPBは2009年からMVPの選考理由を公表しており、16年の城所は、「交流戦期間中、12球団最高打率.415を記録。本塁打、盗塁数もベスト10に入り、走攻守すべての面で勝率1位に貢献した」ことが受賞理由となっている。
04年のルーキーイヤーから15年間の現役生活のうち、もっとも試合に出場したのは11年の108試合。しかし、守備固めや代走での出場が多く打席数は30にとどまった。

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16年の城所は春先から好調で、交流戦では2番・右翼に定着。その後は打撃の調子を落として再び先発から外されたものの、交流戦の59打席を含む162打席はキャリアハイで、100打席超えはこの年以外にない。
パがセに勝ち越して、さらにソフトバンクが最高勝率でなければ選出されなかったMVP。「待機中」の言葉通り、待ち続けた苦労人に神が舞い降りたような16年の交流戦だった。
交流戦はこれまでレギュレーションに何度か変更が加えられており、今年からは優勝チームの制度が復活。MVPもチームの成績に関わらず12球団の中から、期間中に最も活躍した選手1名を選出することになった。

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2014年まで、MVPは交流戦の優勝チームから選出された。15年からは試合数の削減に伴い、リーグ間の対決を打ち出すため、優勝チームの表彰はなくなり、MVPは勝ち越したリーグの交流戦順位1位球団の選手から選出されることになった。
そのため、2018年はヤクルトが最高勝率だったが、パ・リーグが59勝48敗1分と勝ち越したため、MVPはヤクルトからではなく、オリックスの吉田正尚が選ばれた。
つまり、どんなに活躍しても、チームが低迷するとMVPの資格はなかったのである。

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こうした変則的な制度は今年から変更されたため、MVP争いは純粋に選手の活躍だけが焦点となる。これまで以上に注目されそうだ。