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阪神・藤浪が復活するために必要な「最後のピース」

2019 6/15 07:00楊枝秀基
着々と復活ロードを歩む阪神・藤浪ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

2軍戦で5回8K無失点

悩める元エースが長いトンネルを抜けようとしている。入団から3年連続で2桁勝利を果たして以来、成績は下降線。ついには制球難に陥り、出口の見えない迷路にはまってしまった阪神・藤浪晋太郎が、復活ロードを地道に進んでいる。

6月11日のウエスタン・オリックス戦(オセアンBS)で先発し、5回1安打無失点8奪三振。四死球もゼロ、直球の最速は157キロだった。2軍で3試合目となる登板を終え「ボール先行の場面もありましたが、苦しい投球というか、そういうのもなかった。普通に投げられたかなと思います」とようやく本来の姿を取り戻してきた。

「練習が足りない」「精神的に弱い」

大阪桐蔭高時代はエースとして春夏連覇。普通に投げ続ければメジャー移籍も規定路線と思われたほど、次元の違う投球を見せていた。

だが、一度狂ってしまった歯車はなかなか戻らない。周囲からは練習が足りない、精神的に弱いなど、心ない言葉も伝わり、気分がいいはずはなかった。それでも腐ることなく、多くの人間から客観的な意見を耳にして一歩、一歩、前進してきた。

屈辱のオール左打者

復活を期して臨んだ今季は春季沖縄・宜野座キャンプで2月11日の紅白戦に登板したところからスタートした。2回を2安打1失点も2死球。一抹の不安を残しフォーム固めに執心した。同19日には入団以来最多となる291球のブルペン投球。2日後の21日には258球もの投げ込みを行った。

それでも、オープン戦初登板の2月24日、中日戦は4回4安打3失点6四死球の大乱調。続く3月2日のソフトバンク戦は、相手に打者全員、左打者を並べられた。

他球団スコアラーは「この状況は藤浪本人にとってショックだったでしょうね。でも、対戦相手の首脳陣の気持ちになれば、右打者の頭の上を抜けるようなボールがきて死球なんてことになってはたまらない。開幕まで約1カ月なわけで逆算してますから、怪我は避けたいですからね。さらに、藤浪の状態を上げさせない心理戦の部分もあるかもしれません」と語っていた。この試合では2回2安打無失点だったが、次の登板の3月12日、中日戦で4回無安打1失点、3四球1死球の結果を受け無期限2軍調整となった。

スリークォーター、二段モーション…試行錯誤

スリークォーター気味に腕を下げフォーム改良を試み、二段モーションも試した。あらゆる可能性を見出そうと努力を積み重ねた。

5月18日のウエスタン広島戦(由宇)で今季公式戦初登板初先発のマウンドに上がると、1回を三者凡退。同30日には中11日でオリックス戦(鳴尾浜)に先発し、3回を打者10人、36球、無安打、1四球、無失点という好投をみせた。

確実に手応えを掴んで臨んだ、6月11日の3度目のマウンドでは計5打席で右打者と対戦し、制球を乱すことなく無難に抑えた。

フォークや緩い球でアクセントを

交流戦のためヤフオクドームで報告を受けた矢野監督は「だいぶ先が見えるような段階になってきたんじゃないか」と評価。藤浪自身も「スライダー系の一辺倒になってしまった。長いイニングを投げるにはもうちょっとフォークだったり、緩い球だったりを使えないと。ゆとりを持った投球というか、アクセントになるような」と先を見据えたコメントに変わってきた。

裏を返せば、その辺りをクリアできれば…という自信も垣間見える。

次回18日は7イニング

昇格のタイミングについてはまだ未定だ。だが、一定の目処が見えるところまできた。次回登板は18日の広島戦(鳴尾浜)で7回程度を任せられる予定。

阪神が現在のように上位をキープできれば、最もチームが苦しい時期に救世主となれるかも。そんな想像ができるような投球内容を首脳陣も、ファンも待ちわびている。