打撃主要3部門でトップ3位内に位置する坂本と鈴木
打撃戦が目を引く今季のプロ野球。セ・リーグでは、特に2人の右打者がスラッガーとして圧巻の活躍を見せている。
交流戦スタートから1週間が経過した6月11日終了時点、リーグ本塁打数トップに立つのは21本で巨人の主将・坂本勇人だ。不動の4番として広島をけん引する鈴木誠也が17本で3位タイにつける。
前回のWBCでは侍ジャパンの一員としてともに戦い、球界を代表する右打者として近年安定した数字を残してきた両選手だが、今季ここまでの打撃はその上を行く。本塁打のキャリアハイは坂本が2010年の31本、鈴木が昨季の30本。坂本は10本台で終えるシーズンがほとんどだったが、今季はシーズン50本を超えるペース。鈴木も40本超えのペースだ。
総合的な打者の攻撃力を表すOPS(出塁率+長打率)は鈴木が1.101、坂本が1.007と、ともに1.000を超えリーグ最強打者の地位を争っている。
2人のそのほかの成績を見ると、打率は鈴木が中日・高橋周平(.336)に次いでリーグ2位(.333)、坂本が4位(.319)。打点も鈴木はヤクルト・村上宗隆(50打点)に次いでリーグ2位(46打点)、坂本がリーグ3位(45打点)という並びで、ともに3部門で上位につけている。交流戦の最中ではまだまだ気が早いが、久々の「三冠王」誕生も期待したくなるところだ。
歴代三冠王たちの「年齢」「打順」「守備位置」
平成30年間のプロ野球では、2004年に当時ホークスの4番打者だった松中信彦だけが達成した三冠王。改めてその達成者を振り返ると、プロ野球創成期の1938年に巨人の中島治康が初めて達成。2リーグ制以降は松中の前に野村克也、王貞治、落合博満、ブーマー、バースと7選手により計11回達成されている。
坂本か鈴木がそこに続けるか期待となるが、ここで両選手と歴代の達成者を比較するにあたり、「年齢」「打順」「守備位置」に注目してみたい。

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過去の三冠王の「年齢」は30歳前後に集中している。「打順」は、いずれも4番を含めたクリーンナップ。打点を稼ぐ必要性から当然といえるだろう。「守備位置」は一塁手、二塁手、三塁手、外野手、捕手の選手が達成。守備負担の大きい遊撃手は過去に例がなく、負担の少ない一塁手にやはり達成例が多い。
では坂本と鈴木はというと、どちらも過去の三冠王にはない属性を持っている。
2番打者、遊撃手の三冠王は過去になし、最年少は29歳シーズン
坂本は高卒2年目にスタメン定着して以来の不動のショートストップだ。遊撃手として三冠王達成となれば史上初であり、その価値は大きい。ここ数年の間に聞こえるようになってきた「プロ野球史上最高の遊撃手」という評価も揺るがないものになるはずだ。
さらに、今季の坂本は「打順」も三冠王に例のない「2番」を任されている。最近のプロ野球は「つなぎ」のイメージだった2番に強打者を置くオーダーが定着し始めているが、さすがに「三冠王の2番打者」は想像すらしたこともなかったという方が多いのではないだろうか。
外野手で4番打者の鈴木は「年齢」が過去の三冠王に当てはまらない。三冠王の最年少記録は中島、落合の29歳シーズンとなるが、鈴木は今季が25歳のシーズン。三冠王達成となれば、4年も早い最年少記録ということになる。
歴代の三冠王が29歳から34歳に集中しているのは、ここが打者として最も脂が乗る時期であることを示しているだろう。球史に名を残した名だたる強打者たちでも、主要タイトルを独占するまでにはそれなりの時間を必要とした。25歳の鈴木がこの領域に足を踏み入れることになるのだろうか。
どちらが成し遂げても、「かつてない」と頭に一言つく三冠王。当然ながら、その称号を手にすることができるのはどちらか一方だけだ。終盤に熱い三冠王争いが待っているのか……2人の打撃から目が離せない。
※数字は6月12日終了時点