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ロッテ・井上晴哉、2戦3死球は強打者の証? 試練を乗り越えて真の4番へ

2019 6/11 10:00浜田哲男
千葉ロッテマリーンズの井上晴哉ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

1軍復帰後は4番に相応しい活躍

ロッテの4番・井上晴哉が今季も存在感を放っている。開幕直後は極度の打撃不振に陥り、4月6日に1軍登録を抹消されるも、その後2軍戦で本塁打を量産するなど復調。4月23日に1軍に復帰すると、センターから右方向中心に打ち返す本来の打撃が頻繁に見られるようになった。

3月~4月の打率は.204と低迷していたが、5月は.302。6月に入ってからの打率は.294で、6試合で3本塁打を放つ好調ぶり。昨季はプロ入り後初めて規定打席に到達し、打率.292、24本塁打、99打点とキャリアハイをマークしてブレイク。今季は昨季並み、もしくはそれ以上の数字を残すことができるか、真の4番としての真価が問われている。

交流戦突入直後に試練

昨季は結果的にトータルで好成績を残した井上だったが、当時在籍していたドミンゲスの活躍などもあり、DHのない交流戦ではスタメン落ち。また、扁桃炎を患い2軍落ちとなったため、交流戦で活躍することができなかった。

昨季の交流戦では角中勝也が主に4番に座り、首位打者となるほどの大活躍を見せたが、その角中が左大腿直筋の肉離れで現在離脱中。今季交流戦で4番の井上にかかる期待は大きい。

しかし、交流戦最初のカードとなった6月5日の阪神戦では左ふくらはぎに2度の死球。さらに、6日にも左肘に死球を受けた。7日~8日の巨人戦は6日の試合での走塁中に足を負傷しスタメンから外れた(出場選手登録は抹消せず)。

打撃の状態が非常に良かっただけに、本人にとってもチームにとっても交流戦開始早々、苦境に立たされた形となってしまった。ただ、2戦3死球は見方を変えれば井上が強打者として認知されているともとれ、さらなる高みを目指す上での試練とも考えられる。

死球後の激走から垣間見えたプライド

青柳晃洋から、左ふくらはぎに2個の死球を受けた5日の阪神戦。2個目の死球を受けて出塁した井上は、レアードのあわや本塁打というフェンス直撃の当たりで、一塁から一気に本塁まで生還している。お立ち台では「もう何が何でも点を取ってやるというつもりでした」「あのピッチャー(青柳)から絶対に点を取るつもりだった」と気合いの入った表情で語っていた。

決して走力があるわけではないうえ脚に死球を受けた直後、鬼気迫る激走を見せた井上。勝利への執念はもとより、自身がロッテの主軸であり看板を背負っているというプライドを見ている者に感じさせた。同時に、その強い気持ちはチームメイトにも伝わったはず。

「環境は人を変える」と言うが、昨季から任されている4番というポジションが井上の意識を一回りも二回りも成長させたことを実感した一幕だった。

課題は内角高め

井上は、OPS(出塁率+長打率)がリーグ7位の.916、四死球によってどれだけ出塁したかを表すIsoD(出塁率-打率)がリーグ2位の0.12、長打力を表すIsoP(長打率-打率)がリーグ5位の.257と、セイバーメトリクスの各指標でも4番打者として相応しい優れた数値を残している。

しかし、コース別の打率(捕手視点)を見ると、昨季も今季も真ん中の球に対しては高打率をマークしているが、高めの球(特に内角)は打率が落ちる傾向にある。さらに、内角高めに関しては低打率な上に昨季から本塁打を打てていないため、いかに同コースを見極め、さばいていくかが、より打撃を向上させていくためのポイントになりそうだ。

井上晴哉の2018・2019年のコース別打率と本塁打ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

現在チームは、1番の荻野貴司、2番の鈴木大地、3番の清田育宏の打撃が好調。角中が離脱しレアードの調子も落ちてきた今、4番・井上の存在はロッテの得点力に大きく影響する。

昨季は不完全燃焼だった交流戦で打棒を発揮することができるのか。死球を乗り越え、井上が真の4番としての地位を確立できるか否かは、チームの浮沈に直結している。

※数字は2019年6月9日終了時点