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阪神の原口文仁が復活 過去に大病から表舞台に戻ってきたプロ野球選手は?

2019 6/10 07:00本松俊之
6月4日に復活の一打を放った原口文仁ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

1月の大腸がん手術からの復活

2019年の交流戦が始まった6月4日、各地で逆転あり、サヨナラありと期待通りの熱戦が繰り広げられた。その中でもっとも野球ファンの胸を打ったのは、大腸がんの手術を乗り越え、1軍の舞台に戻ってきた原口文仁捕手(阪神)が放った、フェンス直撃のタイムリーニ塁打だったのではないだろうか。

09年のドラフト6位で入団後、故障で育成契約となった時期もあったが、16年の開幕直後に再び支配下登録されると、捕手として成績を残し、オールスターゲームにも選出された。

この時期の阪神は、絶対的な正捕手が不在で、原口に期待が集まったのだが、シーズン終盤に肩を痛めたこともあり、一塁手や代打で起用されることも多かった。しかし持ち味である打棒が冴えわたり、大きく躍進した年となった。

17年は不振にあえいだが、18年には捕手として、梅野隆太郎と併用された。出場試合は減少したものの、代打として、「神様」と言われた桧山進次郎が08年に達成した球団記録にならぶ安打を放ち、勝負強さを発揮した。

原口文仁の年度別成績ⒸSPAIA

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19年の活躍が期待されていただけに、1月末に原口が大腸がんの手術を受けたことを公表した時は、ファンの間に衝撃が走った。

しかし、早期の復帰を目指すとした本人の言葉通り、5月8日のウエスタン・リーグでの中日戦で実戦の舞台に。そして、交流戦開幕日に出場選手登録をされ、敵地ロッテのファンからも大きな声援を受けた見事な復活劇だった(成績は2019年6月6日現在)。

最優秀防御率のタイトルを獲得した選手の悲劇

大きな病気から復活したプロ野球選手は原口だけではない。

盛田幸妃のシーズン別成績ⒸSPAIA

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盛田幸妃投手(横浜大洋-横浜ベイスターズ―近鉄)は、高卒ルーキーとして1年目の1988年に1軍デビュー。頭角を現したのはプロ入り4年目の92年だった。主に中継ぎでの登板ながら14勝を挙げ、規定投球回数にも達し、最優秀防御率のタイトルを獲得した。

近鉄に移籍した1年目の98年は、開幕から好調でリリーフとして32試合に登板。好成績を残していたが、体調がすぐれず、精密検査の結果、脳腫瘍が見つかり9月に摘出手術を受けた。

必死のリハビリで99年のシリーズ最終戦で奇跡的な復帰を果たし、01年はリリーフで34試合に登板。オールスターに出場し、カムバック賞にも輝いた。

引退後は横浜球団職員、野球解説者として活躍したが、2005年に脳腫瘍が再発。手術は成功したが、これが転移し、2015年に帰らぬ人となった。

プロ入り2年目で急性骨髄性白血病

99年のドラフトでオリックスに入団した岩下修一投手(オリックスー日本ハム)はプロ入り2年目の01年に急性骨髄性白血病と診断され入院。

岩下修一のシーズン別成績ⒸSPAIA

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独特の左サイドスローから繰り出す変化球で打者を翻弄。ルーキーイヤーには44試合に登板し、防御率3.86という成績を残す。2年目も活躍が期待されていたが、思わぬ病に襲われた。ただ、次の年の02年には復帰。

04年には近鉄の消滅、楽天のプロ野球参入を受けた球団合併・分配ドラフトでオリックスと契約。05年に戦力外通告を受けたものの、06年には日本ハムにテスト入団した。病気の克服後は必ずしも満足いく成績はあげられなかったものの、表舞台に戻ってくることができた選手だ。

スパイダーマンキャッチを再び

赤松真人外野手は05年にプロ入り、08年に阪神から広島に移籍し、16年には強肩、俊足を生かしたプレーでチームの25年ぶり7度目のリーグ優勝に貢献。だが、その年のオフに胃がんが見つかった。

翌年1月に胃の半分を切除し、17年は療養とリハビリに専念していたが7月にファームでの練習に合流を果たす。チームのリーグ連覇の直前に1軍に帯同し、優勝の瞬間にはチームメートとともに胴上げにも加わった。18年3月に実戦復帰。この年、1軍公式戦の出場を果たせなかったものの、広島は戦力として契約を更改。現在は2軍で昇格のチャンスを狙っている。

赤松真人のシーズン別成績ⒸSPAIA

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こうした選手たちの復活劇は、野球ファンだけでなく、病気に苦しむ多くの人にとっても支えとなるものだ。

原口の今後の活躍はもちろん、赤松が、米国のファンからからも絶賛されたフェンスを駆け上りホームランをつかみ取った「スパイダーマンキャッチ」を再び見せてくれることを野球ファンは待ち望んでいる。