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近本、西ら新戦力や「JFD」だけじゃない 阪神の好調に「ファンへの挨拶」も一役?

2019 6/4 07:00浜田哲男
笑顔で練習を見守る矢野燿大監督ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

新戦力の活躍で好調を維持

好調を維持している阪神。6月2日終了時点で29勝24敗2分の貯金5でリーグ2位につけている。野手ではルーキーの近本光司、投手ではフリーエージェント(FA)で移籍してきた西勇輝といった新戦力の存在が大きい。

近本は打率.307(リーグ10位)、65安打(リーグ3位)、15盗塁と三塁打5本はともにリーグトップと、リードオフマンとして申し分のない働きを見せ、西は防御率2.54(リーグ5位)、QS率(先発投手が6イニング以上を投げ、自責点3点以内に抑えた場合に記録される指標)が80%(リーグ3位)、WHIP(1投球回あたり何人の走者を出したかを表す指標)も1.00(リーグ3位)と、先発ローテーションの柱の一人として期待通りの投球を披露している。

甲子園にフィットした野球を展開

甲子園はとにかく本塁打が出にくい。昨季に関しては12球場最少の68本塁打だった。いかにディフェンス面を強化し、つなぐ野球に徹していくかが同球場で戦う上での重要なポイントとなる。

今季の阪神は近本の加入もあり、盗塁数がリーグ2位の35個、犠打数はリーグトップの48を記録。また、JFD(ジョンソン、藤川球児、ドリス)の3人がそろって登板した試合は、ここまで7勝1分1敗と勝負強く、チーム防御率はリーグ2位の3.49を記録。さらに、打撃の成長も著しい梅野隆太郎の盗塁阻止率がリーグ2位の.400と強肩を発揮している。

機動力を活かしたつなぐ意識とディフェンスの安定感がチームの好調を支えているのだ。

昨季、甲子園では21勝39敗2分けと大きく負け越し、これがリーグ最下位に低迷した大きな要因となった。しかし、今季の甲子園では現在13勝13敗とまずまずの成績を残している。昨季は鬼門と化してしまった甲子園で、いかに勝ち星をのばしてファンを喜ばせることができるか。阪神がこのまま上位をキープしていくためには、本拠地での苦手意識の払拭が必要不可欠だ。

負けてもファンに挨拶

矢野燿大監督はシーズン前、次のように語っていた。

「今年は勝っても負けても、ホームの時は挨拶しようかなと思ってます。ファームではやってましたが、1軍は勝った時しか挨拶してなかったでしょう。負けたらヤジられるけど、勝った時しかしないのはどうかなと思って、ファームの時はやってたんです。来てくれてありがとうという意味で頭を下げるのはいいんじゃないかと」

その言葉通り、今季は甲子園で負けてもファンの前へ出向いて挨拶をしている。矢野監督を筆頭にコーチ、選手全員が一塁側のベンチ前に並び、脱帽して深々と一礼をしているのだ。

負けた試合後であるためヤジは覚悟の上だろうが、少なくともファンとともに戦っていくという姿勢、心意気は伝わるはずだ。実際、この「負けてもファンに挨拶」を励行していることによって、選手もファンも雰囲気が良くなったように感じる。矢野監督は笑顔も多く、ベンチには常に活気がある。

SNSでも好反応

SNSにも、「負けてすぐにダッグアウトに引っ込んでしまうよりは、負けてもファンに挨拶する事はとても良いことだと思うし、ええ根性していて、ファンに対して真剣に向き合っている証拠」「矢野監督には、昨年までのチームの雰囲気を変えようとする意識が見られます。勝つことも大切ですが、チームが負けても最後まで試合を観てくれたファンに対しての敬意が伝わってきます」といったポジティブな声が多い。

阪神ファンのヤジは痛烈という印象があるが、逆に考えればそれだけチームを愛している証拠。勝敗関係なく本拠地でファンと向き合って歩み寄ることは、長い目で見れば大勢の熱いファンを味方につけることになる。プレッシャーに関してもファンと向き合うことで、萎縮してしまうような激しいヤジも、ポジティブなプレッシャーに変わるのではないだろうか。

5月29日の甲子園での巨人戦では、高山俊の劇的な代打サヨナラ満塁弾で勝利。甲子園での巨人戦10連敗という球団ワースト記録を阻止した上に、巨人戦4連勝を決める一発ともなり、ファンと喜びを分かち合った。

本拠地での苦手払拭が、このまま上位をキープしていくための課題であると前述した。「負けてもファンに挨拶」の励行が、今後もチームをプラスの方向に導いていくための大きな要素となりそうだ。

※数字は6月2日終了時点