先発、中継ぎともに不安
開幕から好調をキープし抜け出すかと思われた巨人だったが、ブレーキがかかった。5月11日のヤクルト戦から4連敗。その後も一進一退を続けたが、ついに3位に後退。
特に投手陣は苦しく、5月1日から26日までの20試合でクオリティー・スタート(6回以上、自責3以下)を達成したのは7試合のみと、先発投手陣が役割を果たしているとは言い難い。また、腰の違和感で菅野智之も登録を抹消された。
不安は投手陣だけに収まらず、中継ぎ陣にも及んでいる。「ポリバレント・クローザー(※)」の中川皓太は、ここまでの21試合で防御率0.39と安定した投球を見せているが、戸根千明は5月19日から3試合連続失点を喫し、26日広島戦でも打者1人に対し死球を与えて交代となり、翌27日には登録抹消された。更に、同じく27日にサムエル・アダメスも2試合連続の複数失点で登録抹消されている。
※ポリバレント。本来は、化学において「多価」を意味する語。サッカー日本代表監督を務めたイビチャ・オシムが「複数のポジションをこなすことのできる選手」という意味でポリバレントの語を用いた。ここでは最終回に限らず重要な回を抑えるためにワンポイント、回またぎ問わず起用される投手の意味。
菅野智之の復帰で中継ぎ陣の負担軽減
このまま安定した勝ちパターンを任せられるのは、中川投手ただ一人かと心配されたが、2人の軸が帰ってくる。
その一人は、巨人だけでなく球界のエースとして誰もが認める菅野智之だ。腰の違和感を訴え登録抹消された菅野だが、既にキャッチボールなどは行っており、一軍復帰へのカウントダウンが始まっている。6月4日から始まる交流戦中に復帰の見込みとなっており、エースが戻ってくれば、チームの士気もあがるだろう。
しかし、今シーズンここまで8試合出場の5勝3敗、防御率は4点台を超えており、被本塁打13本についてはリーグワーストと、菅野らしくない数字が並んでいる。当然ながら、先発投手が長いイニングを投げることが出来なければ、中継ぎ陣の負担が大きくなる。
成績面では物足りない菅野だが、8試合で53.2回投げ、しっかりとイニングを稼いでいる。それだけでも価値がある。山口俊、メルセデスとともに3人が長いイニングを投げることができれば、台所事情は改善されそうだ。
マシソンの復帰で改善されるブルペン陣
中継ぎ陣では、スコット・マシソンの復帰が近いと思われる。昨シーズン半ばに左膝の手術を行ったことで、終盤戦を欠場。今シーズンからの復帰を目指していた。しかし、オフ中に感染症にかかったため春季キャンプは不参加だった。
来日した3月からここまで、慎重に調整を行ってきた。既にファームでは公式戦に登板しており、150キロもマーク。数試合のテスト登板で問題がなければ、一軍に昇格するだろう。
クローザーなのかセットアッパーなのか、それとももう少し楽な場面なのか……起用法は未定なので、状態を見ながら判断していくことになるだろう。だが、新戦力として期待されたクックは故障でリハビリ中、ビヤヌエバは不振もありファームで調整中。これなら、敢えてマシソンの枠を作ることなく登録できそうだ。
現在、巨人の一軍では、先発要員のメルセデス、ヤングマン、そして野手のゲレーロの3人が活躍中。実績あるマシソンが戻るだけでブルペン陣に厚みが出るのは間違いなく、奮闘している中川の負担も減るはず。開幕当初はネックでもあった外国人枠の問題だが、何とかクリアできそうだ。団子状態のセ・リーグを抜け出すことができるかもしれない。
※数字は2019年5月30日終了時点