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ロッテ・清田育宏に、ファンが心の奥底で望んでいることとは?

2019 5/26 15:00浜田哲男
BASEBALLⒸSPAIA
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得意の右打ちが復活傾向

ここ数年、不本意なシーズンが続いているロッテの清田育宏。今季は規定打席に到達していないものの、5月26日終了時点で打率.351、出塁率.457と好調を維持している。

本来3番の中村奨吾が調子を落とし、代役で3番に入った角中勝也も不振。5月16日のオリックス戦で2017年8月以来となる約2年ぶりの3番に起用されると、同点で迎えた6回のチャンスでセンター前へはじき返す値千金の一打。さらに、5月21日のオリックス戦から25日のソフトバンク戦まで自身発の4試合連続本塁打を放つなど調子はうなぎ上り。チームを勝利に導く活躍が続いている。

プロ入り当時から定評のあった右方向への鋭い打球が多く見られ、状態の良さがうかがえる。狙いすまして力強い打球を右方向に放つこともあれば、軽打で右方向へ持っていく場面も見られる。リーグ4位の打率.317をマークし、ベストナイン、ゴールデングラブ賞に選出されるなど、ブレイクを果たした2015年のシーズンに頻繁に見られた打撃だ。

好不調の波があり、不振になるとなかなか活路を見いだせない傾向がある一方で、昨季は2度のサヨナラ打を放つなど、時に勝負強さを垣間見せる。今季、ロッテは右翼手を固定できておらず、清田のほかにも岡広海、加藤翔平、菅野剛士らが流動的に守っているが、再びレギュラーの座をつかむことができるのだろうか。

まだまだ老け込む年齢ではない

昨季限りで岡田幸文、根元俊一が現役を引退。33歳の清田は荻野貴司と並び、野手ではコーチ兼任の福浦和也に次ぐ年長者になった。しかし、まだまだ老け込む年齢ではない。

藤原恭大ら期待の若手もいるが、チームが上を目指すためには、ベテランと中堅、若手、外国人助っ人の融合が必要不可欠。清田の同世代がチームを牽引するような成績を残さなければ、選手層は厚くならず、チーム力は決して向上しない。

しかし、加齢による体力や筋力、動体視力などの低下は、アスリートにとってどうしても避けられない問題だ。

2年ほど前、ダルビッシュ有(現シカゴ・カブス)とトレーニングを共にする機会があった清田に、当時の様子を聞いたところ、「あれだけの選手。トレーニングに対する考え方はやはり凄いものがあった」「将来、自分が若い選手達に教える立場になった場合にも役立ちますし、いいものは取り入れていきたい」と感銘を受け、トレーニングに対する意識を、より高めていた様子だった。

1年でも長く野球を続けるためには自分なりにトレーニング方法を勉強し、自身に適したものを取り入れ継続していかなければならない。以来、どのようなトレーニングを己に課しているのかは不明だが、現在好調な要因は良好なコンディションを維持できていることがベースにあるはずだ。

今季は、打席の中でボールがよく見えているようで四球を多く選べており、ファウルで食らいつくなど粘り強い打席も見られる。岡も加藤も打撃に苦しんでおり、清田が現在の打撃を維持できれば、外野の一角に定着する可能性は十分にありそうだ。

昨季、不動の3番打者として君臨した中村がいまだに打率2割前後。角中も状態が上がらずに度々先発を外れている現状。3番に清田がどっかりと座り、クリーンナップに相応しい仕事をしてくれていることは、チームにとって本当に大きい。中村や角中が復調してきた時に打線はさらに厚みを増すはずだ。

2010年、2015年の輝きを再び

清田のデビューイヤーはセンセーショナルだった。2010年5月末に膝を故障した荻野と入れ替わりで1軍に昇格すると64試合に出場。打率.290、出塁率.373という好成績を残した。

日本シリーズ第1戦では、長嶋茂雄以来52年ぶりとなる新人での初戦本塁打をバックスクリーンに放ったほか、全7試合にフル出場し、30打数10安打6打点の活躍。日本シリーズでの新人選手通算最多打点のタイ記録を達成し、チームの下克上日本一に貢献した。

2015年は5月に球団新記録となる4試合連続猛打賞、月間40安打、また同時期に23試合連続安打を放つなど大ブレイク。リーグの右打者ではトップとなる打率.317をマークし、チームのクライマックスシリーズ進出に大きく貢献。第1回プレミア12の日本代表第1次候補にも選出された。

その後はさらなる飛躍が期待されたが、それ以降のシーズンは振るわず低迷を続けている。野球選手は3年活躍して初めて一人前とはよく言われるが、2015年を最後にファンの期待に応えられていない。同年の輝きを多くのファンが覚えているからこそ、清田には「もっとできるはずだ」とファンからの檄が飛ぶ。地元・千葉県鎌ケ谷市出身のフランチャイズプレーヤーだからこそファンの期待は大きく、応えられなかった時の失望も大きい。

しかし、それは同時に清田が愛されている証でもある。清田を見るファンの目は年々厳しさが増してはいるものの、心の奥底で「もうひと花もふた花も咲かせてほしい」と願っているファンは多いはず。

「清田に期待できるってのが、今年はデカいよな」「2015年の清田が復活してる!」「清田の復活はやっぱり嬉しい。3番に置けるから他の主力を下げられるわけだし」「清田復活という最大の補強」といった、清田に期待する声がSNSに連日寄せられている。勝負強い打撃で躍動する現在の姿を見て、「今季こそは頼む」と期待は高まっている。

本拠地のZOZOマリンスタジアムでは、清田が打席に入る度に清田コールがスタジアムに響き渡るが、ここ最近はその声援のボリュームがひときわ大きくなっている。33歳で再び迎えた覚醒モード。シーズンの最後まで全力で飛ばし続ける。

※数字は2019年5月26日終了時点