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ライオンズ、4回と5回の失点率が1超え 鬼門の回を打破するカギはベテラン内海の復活?

2019 5/21 07:00山浦和樹
BASEBALLⒸSPAIA
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与四死球は首位ホークスと大差なし

昨シーズンのパ・リーグ覇者、埼玉西武ライオンズの調子が上がらない。防御率は4.67でリーグワースト。中でも先発投手陣の防御率が5.28(リリーフ投手陣は3.58)と、強力な打線の援護があるおかげでなんとかなっているが、他のチームであれば試合を作りきれていない状況である。なぜ西武の先発投手陣は打たれてしまうのか。

防御率や失点と聞いて思い浮かべるのは、被安打と四死球の数だろう。ライオンズの与四死球の数はリーグワーストの200である。このうち先発投手が与えたものは121個でこれもリーグワーストだ。

一方で、パ・リーグトップの防御率3.20(先発防御率3.47)で首位を独走するホークスの数字を見てみると、与四死球の合計が191個でワースト2位。その内先発投手が与えたものが117個だ。

こうしてみるとライオンズよりは少ないもののそこまでの大差はないのである。さらにライオンズの先発投手平均投球数が102球、ホークスが100球なので割合で考えても差があまりない。

では、被安打と奪三振の数ではどうか。

ライオンズのここまでの先発投手の被安打は273本。一方ホークスの先発投手の被安打が216本。その差は57本である。そして奪三振数はどうかというとライオンズの先発投手の奪三振が147、ホークスが204でその差は69である。

被安打の多さが原因となっているのが一目瞭然となったが、さらに失点をイニング別に見ると面白いことが分かった。

鬼門は4回と5回

投手陣のイニング別失点率を見ると、4回が1.167、5回が1.095とどちらもワーストとなっているのだが、確率的に考えると中盤の2回で必ず2点以上失点する計算になる。それぞの失点率ワースト2位は、4回が楽天の0.81、5回が日本ハムの0.69であることからも、これが異常な数字であることが分かるだろう。

3回と6回の失点がそれぞれ0.667、0.571となっており、ライオンズにとって4回5回が完全に鬼門になっている状態だ。

ライオンズがなぜ4回5回に失点するのか。これといったデータは見つからなかったのだが、選手事情から推測すると、それは先発陣の経験不足と経験を伝えられるベテランの不在に起因するのではないだろうか。

ライオンズの主な先発投手をまとめてみるとこうなる。

ライオンズの先発陣ⒸSPAIA

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ライオンズの先発陣の顔ぶれを見ると、先発ローテーションの経験が一番長いのは十亀の7年目、その次が4年目の多和田で、それ以外は3年以内。先発ローテーションに名を連ねる投手の半分以上が2年から1年目の投手なのである。

先発投手陣全体が経験不足なのは否めない。経験の少ない投手は、最初から飛ばしがちなので、球数が増える4回、5回の失点が増えている可能性が高い。

ベテランからあるいはベテランのプレーから、そういったことを学べれば良いのだが、残念ながらチーム内に長年先発ローテーションとして戦ってきた選手が少ないため、経験や知識を得る機会が少なくなっているのが現状である。

ホークスの先発陣ⒸSPAIA

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一方でホークスの先発陣は現在1軍で先発として活躍している中で、最長が8年目の武田であり、千賀や東浜も4年間先発ローテーションとして戦っている。さらに2軍には和田、中田といったベテランもいる。ここに大竹や高橋といった若手が加わることで、若手と中堅、ベテランがバランス良くローテーションしているのだ。

また、中堅やベテランがしっかりと若手に戦い方を伝授することで、チーム全体の投手陣が安定していくサイクルができていると考えられる。

ライオンズとホークスの先発投手陣の決定的な差は、こういった中堅とベテランの差にあるのではないだろうか。

内海の復活がカギとなるか

こういった現状を打破するために鍵となるのが内海の復活である。

内海は常勝巨人軍で長年先発ローテーションを守っていたベテラン投手だ。もちろん先発投手としての戦い方を知り尽くした選手である。全盛期の力はなくとも、経験や知識を活かしたピッチングを見せることで、力の入れ方や抜き方など先発投手としての戦い方を伝授し、魔の4回5回を乗り越えるきっかけとなることが期待される。

しかし、そこで上手くいったとしてもライオンズには別の問題がある。

ライオンズはFAでの戦力流出が最も多いチームである。FA制度が始まってからのべ16人もの主力選手が新天地に旅立った。

本来、ライオンズにも、ホークス同様にベテランの先発投手がいてもおかしくないのだが、岸孝之(楽天イーグルス)や涌井秀章(千葉ロッテマリーンズ)のように優れた投手を育てたとしてもFAで移籍しまう風潮があるのだ。

実績のある投手が出ていってしまうことで、経験や知識を継承できず、優秀な投手を輩出しながらも、いつまでたっても投手王国を築けない。現在の投手の成績は、そのような、チームの問題を浮き彫りにしているのではないだろうか。